第796話 迷惑客

少し時間的にゆとりができたとき、隣人カーラのお店に足を向けるサラ。

「あらご無沙汰ね。忙しいのは分かるけど、たまには遊びに来てよね」

「はい、ありがとうございます。何か珍しい物は入荷されましたか?」

「あら、その前にこれをお願いして良いかしら?」


カーラは魔道具のお店をしているだけあり、呪いの魔道具も入荷することが多い。サラはその呪いの≪解呪≫の手伝いをしていたのだが、最近は忙しさにかまけて出来ていないので、結構たまっていたようである。

≪解呪≫が終わった後は、新たに入荷した魔道具の≪鑑定≫をさせて貰いながら、その魔道具に刻まれている魔法陣について書き出す。サラが居なかった間に入荷、販売されて行った魔道具の魔法陣の記録もカーラが取り出して来て、魔法陣についての談議が弾む。

新たな魔法の習得のきっかけにもなりえる、魔法陣に刻まれている魔術語の解読など、サラにとって趣味であり実益もある楽しい時間を久しぶりに過ごす。カーラは数少ない同好の士というわけである。


そこに「店主は居るかい?」と不躾に扉を開けてくる人物。カーラはサラのために店を一時的に閉めて、準備中の案内をかけていたのである。

「ちょっと、来客中だからまたにして」

とカーラが入口に顔を出すこともなく声をかけても、ずかずかと誰かが入ってくる。

「俺だ、ロンだ。入るぞ」

サラと話をしていた応接セットのところに顔を出したのは、金髪のかなり整った顔をした若者であった。


「お、魔法陣か?これは珍しいな。保温機能か?こっちは軽量化か?」

「ちょっとロン様、来客中です!サラ、ごめんなさいね。このロン様、お金はあるみたいなのと、それなりに魔法や魔道具の知識があるらしいお客様なの」

「ん?それなりとはなんだ。ん!?おお、こちらの美人は?まさか、店主の隠し子か!?」

「「違います!」」

「では、お茶でもしに行かないか?」

「サラ、もう一つ、この女ったらしというのも修飾語に忘れていたわ・・・」

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