第775話 辺境国偵察

サラが辺境国の上空偵察に向かおうとすると、仲間たちもさすがに心配になる。

「魔物が多く住む地域であり、急に何が出てくるか、≪転移≫すら間に合わない攻撃を受けることもあるかもしれません」

「俺もワイバーンに騎乗して同行するし、≪飛翔≫できない奴はドラゴンに乗せて貰えば良いじゃないのか?ワイバーンよりも何人も乗れそうだし」

「そうね、ドン、頼むわね」

「食事を期待する」

「それしかないの?まぁ分かりやすくて良いわね」


ドラセム家の魔術師団で≪飛翔≫ができる者と、騎士団で腕が立つ者の合計10人で偵察に出発する。とはいえ、Sランク魔物のドラゴンやAランク魔物のワイバーンも居るので、小さな軍勢ぐらいであれば殲滅可能な戦力である。過剰戦力による威力偵察になるのであろうと、各国の司令官たちは密かに思いながら見送ることになった。


しかし、流石にサラたちもわざわざ危険を冒す必要が無いので、皆と離れてからは、光魔法の≪透明化≫で姿を消して飛ぶことにした。もちろん、互いに透明では衝突も危惧されるので、距離を空けるようにしつつ、巨大なドラゴンとワイバーンだけ≪透明化≫する。それなりの上空を飛べば人の大きさ程度は目につかないと想定しての案である。



以前に、夜に辺境国の入口から眺めたときに野営のかがり火や村落があったように見えていたが、軍勢はかなり片付けたので陣営らしきものはほぼ残っていない。

しかし、平原や森林のなかにはゴブリンやオークたちの物と思われる集落が存在する。少し大きめに見えるものの中にはハイオークキングの拠点だったものもあるのかもしれない。

オークなどの人型魔物ももちろん見かけるが、アルメルス神国への侵攻には来ていなかった、獣のような魔物もそれなりに見える。

制御がきかないから連れて行かなかっただけなのか、やはり辺境には通常の魔物も多く生息しているようである。一般の将兵を気楽に辺境国に侵入させるのは避けた方が良いのかもしれない。

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