第776話 辺境国偵察2

サラたちは飛行しているだけありかなりの速度で偵察を行っているが、確認したい範囲は1日で終えるほど狭くはない。かといって、ドラゴンという通常の魔物は忌避するであろう仲間が居ても、見知らぬ土地で野営する危険をわざわざ選ぶことは無い。


転移用の座標だけ把握すると、コルマノン王国で自ら開拓を進めている代官地に帰ることにした。ドラゴンのドンは、代官地の屋敷に連れて行くと皆が驚いたのもあり、いったんは開拓地の北部、大きな人工湖を作る際にできた、その北側の丘に連れて行く。

「ここから北東側に広がる魔の森は、好きなだけ狩りをして良いからね。もちろん人間ではなく魔物を、ね」

「木々は?」

「魔の森の木ならばちょっとぐらい倒したり燃やしたりしても良いわよ」

神国でのドタバタが終わった後も飼育場は必要になるので、様子見である。もしここで上手く行かなければ、コルマノン王国とレーベルク帝国の境にある龍の棲む山に連れて行くことも考える。


そういえば、ドンは元々どこに住んでいたのであろうか?さすがに神国辺りで≪転移≫するのと違い、コルマノン王国まで来ると知らない場所だからか周りをしきりに確認していた。出会ったガーライト王国やアルメルス神国のあるコリサ大陸の生まれなのであろうか。


ドンを魔の森に連れて行った後は、10人だけではあるが久しぶりの王都の本宅でゆっくりできるので、集まれるメンバとだけ顔を見ながら夕食を取ることにした。

家宰のローデットとは頻繁に会っていたが、もともと冒険仲間で今は職人に専念しているリリーやカーヤとは落ち着いて食事を取る機会もしばらく無かったので、懐かしい。

「最近、カーヤがベンノと仲が良いのよ」

「ちょっと余計なこと言わないでよ」

「嘘じゃないでしょ?やっぱり同じドワーフだからなのかな?」

「きっかけはそうだけど、互いに職人というのもあるからかな」

アルテーラ王国で盗賊に捕まっていた木工職人のベンノが、職だけでなく仲間ができたのは、盗賊から助けて親ともども連れて来たサラにしてみたら喜ばしい限りである。

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