第767話 ダラム防衛戦

首都ダラムの南西に、歩いても渡れるぐらいの川が流れている。

その川の北岸に各国の将兵が次々と集まってくるのと合わせて、川の南岸に魔物たちも陣地を築きだす。


ガーライト王国とアルメルス神国の海上や海岸における交戦状態も、サラたちが両国の休戦命令の指示書を運ぶのを手伝ったこともあり、一部を除いて戦闘行為は無くなったことで、そちらに割かれていた兵力は、近隣の魔物から村民を守る程度は残しつつも、順次、神国の南西に集まって来ている。



そうして決戦が近づく頃、ガーライト王国の王都ムリンにあるサラの屋敷に、王城に来るように伝言が入る。急ぎ駆け付けてみると、国王自ら応接室に現れる。

「ドラセム卿よ、待っていたぞ。そろそろ決戦であろう。我も戦場に連れて行け」

「え!?どの国も元首は戦場に来ていませんよ。現場である神国であっても教皇は首都の中にいます」

「他国は他国だ。良いから連れて行け」

「怪我しても知りませんよ・・・」


元Sランクの冒険者であった国王アルミーノ・ドルフィオ・ガーライト。現役のときに比べれば衰えていても、国民からの信頼は高く、戦場に姿を現すとガーライト王国の将兵の士気はあがる。さらに、その辺の将兵よりも戦力になるのが他国にしてみると妬ましい。


サラはコルマノン王国の使節団や宰相に状況を報告すると、

「噂には聞いていたが。かといって我々は同じことをする必要は無い。コルマノン王国が誇るSランク冒険者であり王国伯爵でもあるドラセム卿が先導しているからな」

と言われてしまう。

国を背負う重責は嫌であるが、一般の国民たちが魔物に蹂躙されるのを見過ごす気もないので、できることを頑張るつもりである。


そして、ダラムの襲撃以来、姿を消していたダークエルフたちがチラホラと川の南岸に見えだしてくる。いよいよ決戦の火ぶたが切られようとしていた。

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