第721話 神国最東街アルスター2
「それと、気になったのが戦争状態にあるはずの、ガーライト王国への感情よね」
「そうですね、セントハムでは陸戦が無いままでも神国に対して、上から目線で鼻持ちならない、という悪感情はありましたよね。でも、このアルスターではガーライト王国へは単なる隣人程度の扱いで。とても戦争相手と思えない感じですよね」
「ガーライト王国は、治安が悪かった地域で元冒険者の現国王が国家を樹立した経緯があるから、外交上では神国から新興国として下に扱われているんだろうね。けど、神国の国民、それも海とは離れた地域の住民からは特に関係ないのだろうね。どちらかというと、商魂たくましい商人が、魔の森を経由して商品をやり取りする先ができた、という感じで」
また、豊穣の女神デメテルを主神とする至高教団の国であるはずだが、デメテル以外の神殿もそれなりにあり、住民全てが至高教団に属しているわけでもないようであった。
実際に中に来てみないと分からないことが色々とあるものだと思い知らされる。
商店でも特にめぼしいものが並んでいるわけでも無かったので、馬を追加調達して西に進むことにした。商人を装うのはやめて、冒険者のままでいく。
もちろん、途中途中の街や村でも、サラの身分証を提示する危険を回避するため、サラだけは門を正規に通ることはしていない。
いずれの街や村でも、質素、デメテル以外も普通に信奉ということは変わらなかった。さらに、首都や国の南西に向かう理由はわからないままである。田舎を飛び出して、首都など都会で成り上がることを目指すのは特に不思議な話ではないが、南西に何かあることを隠している素振りがある。西に進むほど、役職が上であるほど理由を知っている感じであった。
いよいよ翌日には首都ダラムに着くという前夜、野営をしていたサラたちは作戦会議をする。
まず宰相に、首都手前まで到着した旨を報告する。サラが王都に≪転移≫して、である。
「やはりどの街や村も質素であったか。実は以前から噂はあった。しかし、首都と他国使節団の通る街道沿いだけはそうでないらしいのだ。外交的に優位に立つため、弱みを見せない張りぼてなのであろうな」
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