第679話 ヴィリアン侯爵領問題2

いったんフェルールは嫁ぎ先のヴィリアン侯爵家の王都屋敷に戻って行く。


翌日、サラは宰相や官僚に制度的な問題が無いかを確認に行く。

「ふむ、ヴィリアン侯爵領の魔物のことは認識している。もしドラセム伯爵としてではなく、冒険者クランのトップである冒険者サラ・ドラセムがメンバを連れて魔物退治に向かうのであれば、問題は無い。個人的には人が良いヴィリアン侯爵を助けてやって欲しい」

「かしこまりました」


数人の冒険者パーティーではなく、それよりも大きな、場合によっては屋敷を共同で借りるなどした集合体が冒険者クランである。同じ冒険者依頼を皆で受けることが無かったので、クランとして意識したことは無かった。

この前の、帝国における悪魔教団本拠地に向かったときに、いつものサラたち6人以外にトリストフたちとも協力して行ったのは、少し規模の小さなクラン扱いであったかもしれない。

ドラセム伯爵家の従士団は基本的に冒険者登録をして魔物退治やダンジョン探索などの訓練をさせている上に、サラが所有者である屋敷や代官地に居住しているため、巨大な冒険者クランと言えなくもないのであろう。

少し強引ではあるが、制度的に問題がないのであれば、前向きに検討することにする。


代官地護衛隊38人は当然、魔の森の開拓地に残すことにしても、だんだん人数も増えてきた従士団、従士長・騎士団長でもあるハリー以外で近衛騎士隊7人、第1騎士隊20人、第2騎士隊26人、魔術師団25人も居るのでこれだけ派遣すると色々とできるはずである。

最近の魔の森の追加開拓において魔物討伐に苦労せず、その後の土地整備も楽になったのも頷ける。


家宰ローデット、ハリー、近衛騎士隊長ディディエ、第1騎士隊長ルーカイ、第2騎士隊長ミリアーノ、魔術師団長ティアーヌを集めて、ヴィリアン侯爵領への冒険者としての魔物退治遠征について相談する。

「代官地の開拓では弱い魔物が少しだけでしたので、集団戦闘の訓練には良いと思います」

元帝国軍人ルーカイの発言に対して、元アルテーラ海軍ミリアーノも同意する。

「我等、過去の経緯がバラバラであるので、チーム間連携が甘いと思われます。ぜひ一つの目標への一体感の醸成のためにもできるだけ多くを派遣ください」

ダンジョンを含めて、数人の冒険パーティーを超える連携が不足しているという指摘から、またどこかの戦争へ派兵する可能性を踏まえて皆で行くことにする。

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