第678話 ヴィリアン侯爵領問題

フェルールは嫁ぎ先であるヴィリアン侯爵家の領地問題について、話し出す。

「伯爵家当主のサラ様に嫁ぎ先の恥を話すようで申し訳ないのですが、お聞きください」

「そんなことは気になさらずに、お力になれることがありましたら」

「ありがとうございます」


ヴィリアン侯爵の領地は、コルマノン王国の北西側で魔の森も多く含まれているらしい。その割に、サノワ侯爵領のワチエダンジョンや王都側のワーズダンジョンのように効率的なダンジョンが存在しなくて、冒険者も集まりにくい、率直に言うと田舎領地であるという。

数代前の当主が法衣侯爵であったのに領地を望んだため、このような状態であり、優れた魔法使いとのフェルールを令息の正妻に迎えたのも、領地に魔法使いがあまりいないことも理由らしい。

だんだんと資産も食いつぶして行き、魔物の間引きを行う依頼料も縮小していることで、領地内での魔物被害も増えて行っているとのこと。

領地持ち侯爵ではあるが、かなり経済的には困っているらしい。


ただ、当主や令息の人は良いので、結婚そのものは後悔していないとフェルールは話をまとめる。


「実家のヴェシン伯爵家もそれほど余力があるわけでないのは知っていますが、父に会いに王都の実家の屋敷に来たタイミングと、サラ様のお誕生日が重なりましたので、お邪魔した次第です」

同級生でもあったサラとリリーは、どんな理由であれ再会を喜んでいた。


「ねぇサラ、何とか手伝ってあげられないかな?」

「そうしたいけど」

ローデットが発言する。

「貴族当主のサラ様では、貴族同士の下手な貸し借りで相手の面子も考える必要があります。それはヴィリアン侯爵家とヴェシン伯爵家の両方に対してです」

「正直、嫁ぎ先は気にしている立場ではありません。お父様は、魔物退治に他領へ送り込むほど人材は居ないが、経済的支援はある程度なら、と申しております」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る