第680話 ヴィリアン侯爵領遠征
サラはさっそくフェルールに承諾の旨を伝えに、ヴィリアン侯爵の王都屋敷に向かう。
「実態は従士団の訓練としての派遣ですので、表向きである冒険者クランへの依頼の報酬額は形式程度で結構です。ただ、通常の依頼のように討伐した魔物の素材等は全て引き取らせて頂きます」
「サラ様、本当に良いのですか?ありがとうございます!」
「私たちにもメリットがあることですので。それで、出発は少しでも早い方が良いと思うのですが」
「はい、いつでも行けます」
「では、すぐにでも領地に向かってください。私たちはバトルホースで駆けて行きますので」
王都の冒険者ギルドにはヴィリアン侯爵の王都屋敷の執事と一緒に訪れて、依頼受領の手続きを行う。
その上で、サラの冒険パーティー6人だけバトルホースで出発し、現地に向かう。残りメンバは、サラが現地で座標を把握した後に≪転移≫で移送するつもりである。
ヴィリアン侯爵領は王都から馬車で4週間と言われるので、バトルホースでは2週間ほどと見込む。
冒険パーティー以外の従士団はその間に、代官地の付近の魔の森で連携の訓練や食料調達などの準備を行う。サラの転移を経験していない者がほとんどであるので、経験者が事前に説明をしておく。
どこかで嗅ぎつけて来た神官アッズーラも参加を希望したが、従士団でないだけでなく冒険者でないことを理由に断っておく。
サラたちは、アルテーラ王国に向かう際に通った街道を少しだけ進んだ後は、すぐに北に右折する。途中でフェルール達の馬車に追いつくが、現地を少しでも見ておきたいと、サラたちだけでも先に現地入りするためフェルールを追い越すことにした。
サラたちは領都に着いた際、聞いてはいたが規模について驚く。過去に行ったことのあるサノワ侯爵領都サノワール、そしてヴァーヴ侯爵領都サイユがもともと伯爵領都だったのに、それらとはまったく比較にならず、規模的にはバッソ男爵領の港町バッソに近い。しかも領内には他に街らしいものはなく残りは村ばかりという。
唯一の街である領都にのみ冒険者ギルドがあるというので行ってみるも、閑散とした内部であり、受付に聞くと魔物討伐依頼が多すぎるのに低ランクの冒険者が主で、低級魔物の依頼のみ何とか処理できて行っている状況であるという。
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