第665話 アッズーラ思惑

神国が帝国から撤収したのは、神国の神官アッズーラの助言があったからとのこと。

「ドラセム様、アッズーラ様姉妹をコルマノン王国へお連れ頂けないでしょうか」

「どういうことですか?」

帝国の宰相が合図をすると、神国に一緒に帰ったと思っていたアッズーラ姉妹が現れる。

「今回の使節団の関係で、あんな使節団長を送り込んで挑発する神国には愛想が尽きていましたが、妹のチェッリーナのことがあり我慢していました。ドラセム様のお陰で命を繋ぎ、帝国にまで付き合う判断をしてくれました。海賊騒ぎで途中でなくなりましたが。その後、何とか帝国でチェッリーナと再開できましたのは、ドラセム様のご助力のお陰です」

「後半は違うと思いますが・・・」

「いえ。で、帝国に来てみたらこちらでも神国の使節団長のせいでチェッリーナは幽閉されていたと。待遇は良かったようですが。もう神国に戻りたくはありませんし、帝国に助言をしてしまった私たちは戻ることもできません。ドラセム様、どうか私たち姉妹をコルマノン王国へお連れ下さい」

「神国でない帝国でも良いのではないですか?」

「待遇が良かったとはいえ、長期間幽閉されていた国よりも、最後まで紳士的な対応を頂けた王国にお願いしたいのです」


即答は避けて時間を貰い、王国の宰相に水精霊シルビー経由で相談をする。神国が帝国から撤退したことの報告と、アッズーラ姉妹の王国への亡命希望について、である。

神国から責められる理由の一つになりえるので、国家として受け入れではなく個人的な移転として黙認することにする、と宰相は判断した。


翌日、冒険者サラのパーティーが、アッズーラ姉妹の王国への旅行の護衛依頼を受けるということになった。

それと合わせて冒険者ギルドにおいて帝国からの報酬も清算され、かなりのミスリル貨を受け取ることになった。悪魔教団がため込んでいた物があっただけでなく、それを壊滅することの貢献、さらに神国が引き上げることになったこと等々の評価であった。お金ではなく秘蔵の魔導書などでもと思ったが、他国の貴族でもあるサラにそれは無理であると諦める。


また図らずしも監視役がつくような状態で帰国することになり、秘密を守るため転移陣は使えない。幸いアッズーラ姉妹にバトルホースを貸し与えるとそれなりに乗りこなすことができて、馬車よりは早く1月半ほどで王都に到着となった。

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