第630話 タカマーノ疑惑2

「どういうことですか?」

ととぼけてみるが、

「尾行していたからお分かりでしょうが、あの写しは海軍閥に渡しています」

と言われるので、

「ご説明頂けますか?」

と要求する。


では、とタカマーノが意図を説明し始める。


あれをくれたのが実質はコルマノン王国ということは理解している。表向きの国家間の内容にしたくないという意図には同意なので、水面下で調整したい。

自身にも海軍閥との伝手もあるので、そこであれが事実か確認した上で、第2王子が絡んでいたのならば関与の痕跡整理をする時間を与える代わりにこの額を貰った。

海賊騒ぎに対して、海軍閥の中でのペナルティは与えるが、国家や王族の関与は無いという形で、水面下で別途コルマノン王国に謝罪を行うことにする。

その方向を落し所にすることを海軍閥とも握ったという。

海軍閥としても第2王子の王太子レースは少し出遅れるが、海軍閥はこんなことでは負けないと強気であったらしい。


タカマーノの横でぶ然とした顔で黙って聞いている第3王子であったが、

「なぜ俺に相談をしない。そのまま長兄の派閥に渡してしまえば良かったのに」

と最後に発言する。

「我々は派閥争いをしていますが、国力を下げてしまうのは本末転倒です。また他国に大きな借りを表向きに作るわけにいきません」

「それで?」

「・・・第1王子の独り勝ちにさせると文官がつけあがり、海軍閥・陸軍閥の武官の勢力が弱くなります。陸軍閥の我々としても、海軍閥に対して恩を売りながら存在感を示す必要もあるのです」

「どういうことだ?」

「・・・第1王子が王太子そして国王になった後に、弱体化した武官全体の中でもさらに海軍閥に恨まれたままでは、陸軍閥、そしてダニエーレ様の立場が無くなって困るのです。各派閥は相手を殲滅することや王太子・国王を決定するのが目的ではありませんので。そのため、必要ならば派閥間での機密情報の交換も行います」

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