第616話 ベンノ2

サラたちは、土精霊ペクトーンとの契約もできた上に、カーヤの修行も許可され、ミスリル短剣も見ることができたので、このドワーフ村への訪問に満足している。


それに対して、連れて帰って貰ったベンノは悩んでいた。

奴隷扱いされていたのも解放されて、帰郷して両親にも会えた。ただ、このドワーフ村はやはり金属加工が主であり、自分がやりたい木工関係は難しいままのようであった。

かと言って、このまま村を出ても前回と同様に失敗して、最悪はまた悪者にひどい目に合うかもしれない不安がある。


話を聞いていると、サラたちの仲間のドワーフはひどい扱いを受けているどころか好きなことができているようである。

「俺も、ドラセム様の拠点に連れて行って貰えないでしょうか?」

「え?コルマノン王国の王都?やりたいのは木工でしょう?」

「あ、魔の森の開拓地なら、木はいくらでもあるから使いたいのもあるのかもね」

「そうね、良いんじゃない?木工でも何がしたいの?弓や盾とか?家具?」

「弓や盾も家具も」

「大工みたいなこともできる?」

「ある程度は」

「じゃあ、良いわよ」

とあっさり許容された。


「なぁ、あと金属鎧も製作できる人って、来てくれないかな?カーヤの金属武器、リリーの皮革、ベンノの木工となると、後は金属防具かな。俺たち騎士団の鎧とか」

「この村にも金属防具の職人は居ますが、この鉱山から離れるかは・・・」

「近くのダンジョンから鉄鉱石も入手しているのと、火精霊も協力する大鍛冶の設備もあるので、材料は恵まれていると思うけど」

「え?それは本当ですか?聞いてみます!」


直ぐにベンノが連れて来たのは、ベンノの両親であった。

「改めまして。ベンノの父です。金属鎧など防具職人です」

「ベンノの母です。石工が得意です」

「頼りない一人息子を遠くに送るのならば、いっそのことと思いまして」

村長にも相談しても許可して貰ったらしい。

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