第615話 ドワーフ村長2

この村はずれにある鉱山は鉄鉱山であり、それより奥の方に秘密の鉱山はあるらしいが、やはりミスリルはドワーフたちにとっても相当に貴重らしい。そのため、ドワーフ村にも残るミスリル製品はほぼ無いとのこと。土精霊様へ奉納されたものが、村長宅に少量だけ厳重に保管されているとのことで見せて貰う。


材料が貴重なので小さい物になるのと奉納であるので短剣が3本であった。流石に奉納なだけあり、拵(こしら)えも丁寧な仕事をしているもので、その鞘(さや)から抜いてみると銀色ではあっても通常の鉄製とは全く異なる輝きであった。

既にミスリル貨を見慣れてしまったサラたちも、彫刻がたくさんされる貨幣と違い、研がれ磨かれた刃とは全く違う輝きに見とれる。


「奉納であるので、そのときの村一番の鍛冶師の作品になります。ミスリルですので、魔力の通りも良い一級品です」

との村長の説明に、ハリーは素朴に

「これっていくらぐらいになるのですか」

と失礼な質問をしてしまうが、村長は丁寧に

「値段をつけられる物ではありませんので、ミスリル貨が何枚あっても入手は困難かと」

と答えてくれる。


まわりからハリーに叱責の態度がされるが、ハリーは

「いつか、英雄譚のようにミスリル剣が持てるようになりたいなぁ」

と夢を膨らませるのであったが、村長も意外と好意的に温かい目で見ていた。

「我々の村にまで足を運ばれる方は、武具を愛し、そのように思われる方が多いものですから、我々もそういう方に満足いただける武具を鍛えることを目指しております」



続いて、ドワーフ鍛冶職のカーヤという仲間が居ることを伝えて、外れでも良いので修業に来るための家の購入を相談する。ドワーフ村にはドワーフだけでなく人間でもそういう希望者が居るらしく、鍛冶場は共有施設や弟子入りした師匠の職場を使う前提で、簡易な家屋がいくつもあるとのこと。


歓迎の夕食が終わった後に、水精霊シルビー経由でカーヤに希望を確認すると、どんな家屋でも良いからぜひ、というので、翌日に購入手続きをすることになった。

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