第592話 転移魔法陣3
サイユの師匠エミリー宅の座標表現は分かったが、いきなり遠距離で試すのも怖いので、王都にある別宅、元暗殺者ギルドの拠点と、さらに王都から馬車で1時間ほどの魔の森の開拓地の拠点の座標表現を確認してそこに魔法陣を設置して試験することにした。
それぞれ最初は小さな魔法陣で物を送ることからだんだん大きな魔法陣にして数人が転移できることまで試す。
そしてサイユのエミリー宅にエミリーを送り込んだ後、エミリー宅には、王都の本宅までの魔法陣を設置して貰う。鍵のかかる部屋の真ん中に3mほどの魔法陣を設置し、王都からの転移先もその魔法陣の場所に特定することにした。
同様のことを、王都内の元暗殺者ギルドの拠点、魔の森の開拓地それぞれにも行うことで、現段階では、サラの本宅にサイユのエミリー宅を含めた3ヶ所に向けた魔法陣が設置されることになった。いずれも他人がパッと見ではわからないように床板を上にかぶせて隠蔽はしておく。
ちょうど、港町ラブリニーとバッソそれぞれにも、倉庫とそれに付随する諸々の入手が確定しているため、今回の後処理で再訪問するときに設置することする。
エミリーが来てから実験がますます捗(はかど)ったが、その分することも多くなったので、魔導書の1ヶ月の閲覧期限も目前となってしまい、急いで書き写してから王城に返却することになった。
「しっかり研究したのであろうな。これからも王国への貢献、期待しているぞ」
と宰相から念押しされたのは少し怖かったが、続けて
「商船員など、ガレー船とその乗員以外については大した情報も入手できなかったので、引き取るように」
と指示されたので、いったんは王都の本宅の余っている従業員棟などに連れ帰る。
そこで恒例の食事会をしながらの全員顔合わせをし、特に家宰ローデットと、ドラセム商会の番頭のようなクリストンの指導を受けるように指示をする。また、いつものようにサラの仲間の不利益になるようなこと、魔法に関する秘密などを他者に漏らさないことを奴隷契約の命令としておく。
予定通り上級魔術師に精霊との≪契約≫≪召喚≫を習得させた上で、ラブリニーとバッソに新規メンバを連れて行くのに合わせて、サラとクリストンも行き、魔法陣の設置などを行った上で、その魔法陣で王都に帰宅する。
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