第563話 閲兵式3
報告を終えて戻ったサラに、隣の王国魔術師が言葉をかけてくる。ときどき王国魔術師団のところへ顔を出すようになったサラにすると、顔は見覚えがあるが名前は覚えきれていない相手である。おそらく貴族の魔術師である副団長か何かであろう。
「普通は貴族当主ではなく副官などが到着報告に行くのだから、驚かれたであろう。それに遠目で見ていたが、あれは公爵の嫡子だ。もう少し事務方に報告するものだ。まぁおいおい覚えればよい」
「はい、ありがとうございます」
「それよりも、新しく伯爵になったばかりなのに、歩兵も無く騎兵のみとはすごいな」
「どうしてですか?」
「なんだ、そういうのも知らないのか。昔は騎士とその騎士の従士や騎士見習いの歩兵が付いた5~6人がいくつも集まって小隊や中隊を構成していくのが普通だった。それが、だんだん戦闘形態も変わって来て、騎兵と歩兵はそれぞれ別々に運用するようになってきたのだが、騎士爵など個々の成果把握や指揮命令系統を踏まえるとなかなか移行できずに昔のままなのが第2騎士団の悩みなんだよ。だから騎士と歩兵がきちんと分かれているのは、王国第1騎士団や領地持ち貴族の私有軍ぐらいで、王国第2騎士団で騎兵だけなのは経済面も含めて新規法衣伯爵にできることじゃないんだよ、普通は」
「はぁ、そういうものなのですね。勉強になりました。ありがとうございました」
ハリーも持ち前の人当たりの良さを活かして隣の騎士団と交流するなかで同様の話を聞いていて、失敗したと反省していた。
騎士団・魔術師団がそろってしばらくした頃、神国使節団を連れた国王たちが姿を現す。
「さすが王国騎士団ですね。それに右側の色の揃った騎士団が、近衛騎士団と第1騎士団ですか。精鋭なのでしょうね」
「よくご存じですね。はい、特に第1騎士団は日々訓練をしており王国でも一番の練度と自負しております」
と王国騎士団長が答える。
「先日の帝国戦ではその王国騎士団も王国魔術師団も派遣されずに撃退されたとか」
「幸い、侵攻を受けた領主ヴァーヴ侯爵の騎士団を中心に対応ができたものですので」
「急に強くなられたところのには異教の力があったのでは?」
「元冒険者の貴族が活躍したとしか」
と騎士団長ははぐらかす。
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