第553話 アルバジル脳内

俺は元盗賊のアルバジル。

元々食い詰め者を集めてリーダーだと粋がっていただけだが、そのうち商人とかを襲うようになった。

ただ、生きるために金が欲しいだけだったから、殺したり女子供に暴力をふるったりするのだけは厳禁でやってきたつもりである。


それも焼きが回ったみたいで、王都に近いところで襲った商人親子の馬車を、近くの空き家に押し込んで身代金を取ろうとしたのが失敗だった。この近くの空き家、おかしな話で、ちょっと前まで魔の森だったはずのところが開拓されていて、結構立派な屋敷や一般家屋がいくつか建っていた。しかも新築ではないので、魔物にでも化かされているのかと思うような話だが、実際に中にも入れた。


身代金の算段の話をしていたところに、屋敷の持ち主が来てしまい、取っ捕まったというわけだ。こいつらがまた強い上に魔法も使う奴らで、殺されるかと思ったらお縄になって衛兵に引き渡されてしまった。犯罪奴隷になってきつい鉱山にでも行くのかと覚悟していたら、結局買い取りに現れたのは、その俺たちを捕まえた連中だった。


若い奴らが多いと思っていたが、まさかあのまだ15歳の美少女が伯爵当主で、俺たちの主になるとはな。話を聞いていると帝国との戦争で何千何万の敵兵をやっつけたりワイバーンの群れを魔法でやっつけたりという噂の本人らしい。ま、噂だからな。でもあのハリーとかいう若いのの肩に居るのってワイバーンの子供?本当だったのかな。


で、俺たちにあの魔の森の開拓地の護衛を任せるって?まぁ飯が食えるなら良いけどな。それにしてもこの装備は上等すぎるだろう。それに何だこのマント。俺たちに恨みを持っている奴の復讐防止?確かに恨みは買っているよな、盗賊だったんだから。

でも、ローデットって姉ちゃん、その恨みの可能性のあるリストを作れというんだよな。分かるところまで作ったけど、どうも主にはいちいち報告はしないが、その相手に俺たちのかわりに詫びに行っているらしい。

孤児院もやっているみたいだし、何なんだ、ここの奴らは。


ま、飯も食わしてくれるのだし、訓練しながら言われたことをやってやるしかないか。悪いことをできない奴隷契約だけど、する必要がないならそれに越したことは無いからな。

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