第537話 奴隷追加失敗

孤児の引き取り等は順調な滑り出しとなっているが、家宰ローデットに言われた、子爵から伯爵への陞爵(しょうしゃく)に合わせた従者の追加は進んでいない。

奴隷商にも、性根と地頭が良い者が居ればと頼んでいるが、犯罪奴隷になった者の性根が良いのはやはり厳しい条件のようである。


実際にサラの仲間でも、悪徳奴隷商が無理やり犯罪奴隷にしたアルベールとリリアナ、街中で復讐をして騒動になって犯罪奴隷になったティアーヌ、従者になるためにわざとなったローデットとクリストン、娘の復讐のために犯罪に手を染めたデュドニとガエルの夫婦、孤児で盗賊に育てられ拠点で下働きをしていただけで犯罪奴隷になったアンブリー等々、特殊な事例が多い。


ヴァーヴ元伯爵の寄子でなくなり、未成年でもなくなったサラには、結婚の話だけでなく仕官希望の話が多く来ている。もちろん優秀な人材も居るのであろうが、別の貴族の紐付きや、犯罪組織のメンバの可能性もある者を見抜けるほどの経験はローデットにも無いため、一律でお断りしている状況である。

秘密が多いため、共に危険をかいくぐった冒険仲間であるハリー、リリー、カーヤ以外はどんな命令も守る犯罪奴隷のみがサラの従者である。犯罪奴隷になって仕官を希望しますか?という断りであるため、そこまで問題にはなっていないが、今後も同様にするかは考えなければならない。




そんなことを考えている頃、カーヤは大鍛冶、サラは薬草採取等のついでに従魔のストレス発散のために久しぶりに皆で魔の森の代官地に向かう。

近づいて行くと、無人のはずなのになぜか屋敷の煙突から煙が出ている。


今、代官地は元々の魔の森であった南端で街道側とのつなぎである入口を門のようにして、後は簡単な堀を巡らせている簡易砦のようになっている。そのなかに、最初に作った掘っ立て小屋、王都から移設した屋敷や一般家屋が4棟、カーヤの大鍛冶設備と炭のための建物などがある。知らぬ人にしてみたら、魔の森の角であった場所に数か月で何か出来ている割に無人な日が多い不思議なものに見えるであろう。


その無人なはずの代官地に誰かが居る気配がするのである。

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