第510話 皇帝即位

色々と議論はされたが、結局は第1皇子が皇太子として指名されていた事実も踏まえて、皇帝即位を書面上だけでも先に行うことになった。

それに合わせて、第2皇子派には即位の旨と共に、軍を即時解散すること、従わない場合には逆賊として処分することを通知する。

また、帝国内に攻め入っている王国軍に対しても、先日の第2皇子派という賊による国境侵害については国として管理不行き届きを詫びると共に、賊の処分は帝国内で行うため帝国内にいる王国軍の即時撤退を要求する、従わない場合は王国による国境侵害行為とみなすことにする、という強気の通知も行う。


後者に関してであるが、第2皇子派による国境侵害は昨年と違い国としての意思ではない、賊の行為と言われてしまうと、王国軍の行為が侵略行為となり正当性が無くなる。昨年に逆の侵略行為があったが、そのために多大な賠償もされている。

それを知った王国の武闘派、戦功を稼ぎたかっただけの者たちは、焦りだす。国境付近では戦意が無くなっていた帝国兵に抵抗らしきものを受けずに帝国に入ったものの、街や村では住民からの反発も多く被害に比べてきちんと占有できた地区も少なく、戦功は稼げていない状態で、帝都から第2皇子派の応援部隊が来るという情報もあった上に、侵略者が自分たちという立場になることへの責任を持てないからである。

否応なしに王国内に引き上げて行くことになる。

ただ、それは情報が伝達したもう少し先の話であるが。


帝都を取り囲む第2皇子派の中にも動揺が走っている。ただでさえ、王国軍に自領が攻められている、攻められそうだという情報もあるなかで、逆賊扱いにされてしまうのである。第1皇子と第2皇子による勢力争いではなくなってしまったのである。

いくら第2皇子が手続きとして正しくない等を叫んだとしても、筋での正当性は第1皇子改め皇帝側にあるのである。


第2皇子派でも自領に帰ろうかと考えだした者がいるなか、サラは冒険者ギルドに寄った後、帝都近くの森に居る仲間たちのところに戻り、状況などを伝える。もちろん、水精霊シルビーによる伝言で伯爵領都のエミリーとヴァーヴ伯爵、王都のリリーと伯爵の執事と王家にも事情や背景などを伝えてある。ヴァーヴ伯爵としても、冒険者サラに賊退治の指名依頼が行っただけとなれば黙認するしかないとの回答が来る。

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