第509話 帝国軍議

第1皇子派の軍議に参加させられたサラ。

「この冒険者ドラセム殿のお陰で、兵糧の心配も無くなり、兵を拠出したところで発生していた魔物も居なくなった。これからの我々の行動について議論したい」

「議論対象は、帝都を第2皇子派が囲んでいること、帝都民の不満が溜まっていること、王国軍が帝都西部に攻め入っていること等です」

「第1皇子が皇帝となり帝国を導いて行かれる際に、帝都民の不満の影響は大変大きいため、いち早い帝都の解放が望ましいかと。王国軍が攻め入っていることからも、帝都回りの第2皇子派は動揺があり、そちらに兵を割くために少しずつ包囲網の兵数が減っているとの情報もあります」

「そうは言うものの、今は帝都の防衛力を第2皇子派も認識しているため、帝都自体には攻めてこないが、もしこちらが攻めたとして武闘派の彼らに戦力として勝てるのであろうか?」

「それは・・・確かに精強な兵が多い第2皇子派に、帝城の守りを使わないで単純に戦いを挑むと厳しいかと・・・」

「幾度も第2皇子派を蹴散らしてこられたドラセム殿に加勢を頂くのはいかがでしょうか」

「それは、王国軍の助力で帝位を継承したことになり、帝国は王国に負い目を感じることになるのでは」

「王国ドラセム子爵ではなく、冒険者ドラセム殿に依頼するのはいかがでしょうか」

「冒険者への依頼に戦争参戦などあるのか。冒険者ギルドは国家に属さない中立組織であることが建前なのであろう」

「今回の依頼は国家間の戦争協力ではなく、内部のテロ組織、犯罪組織への攻撃とみなすのです。そのためにも、第1皇子には帝位について頂き、皇帝に逆らい国内を騒がせる賊に対する依頼とするのです」

「籠城中の帝都で、皇位継承の式典を行うのか?」

「まずは形だけ先行して行うのです。すべてを片付けた後に、大々的に行えば良いのです」


サラは一言も発言することもなく、聞かされるだけであったが、この後に、皇帝からの指名依頼を冒険者として受領することになるという流れだけは理解することができた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る