第484話 国境橋攻防2

使者が戻った後は、帝国軍の騎兵隊が橋を駆けてくるが、幅10mほどの橋であり、走る馬では5頭も横並びになるのは危険である。

川幅50mの川は中心部の深さが2m以上あり、騎乗のまま渡ることもできないため、軽装になった者が泳いで渡るしかなく、橋を短時間で走り抜けるよりも矢の的になる時間が長くなる。

守勢が準備していれば、攻め入る方が非常に不利な環境である。


ただ、数で圧倒する帝国軍は力押しの戦術を選択した模様である。

もちろん、通常の王国軍だけの場合、途中で矢が尽きたりして数の暴力に負けたであろうが、サラたちが居るので単純には行かない。

一般的に1,000人に1人しか魔法を使える者が居ないと言われる世界で、戦争で使える攻撃魔法の使い手はさらに限られるなか、その使い手の集団であるのがサラの独立部隊である。


宣戦布告をされ、武装騎兵が国境である橋の真ん中を駆け抜けたところで、王国軍も攻撃を始める。王国軍の弓士は橋上の騎兵に集中攻撃を行う。ただし、走る的に当てることも難しい上に、馬も含めて全身鎧の重騎兵には単なる矢の攻撃ではダメージにならない。

≪必中≫が使えるティアーヌが、留守番のリリーに借りてきた≪頑丈≫≪帰還≫の付いた矢を用いて≪連射≫することで、橋上の重騎兵を、少し空いた目の隙間から次々と倒していく。橋上で倒れた重騎兵は、後から駆けてくる者への邪魔な物体でしかなく、すぐに橋上でつまって行く。欄干(らんかん)があるので、先に倒れた重騎兵とその騎馬を川に落とすことも容易ではないが、先詰まりになった橋の上に次々と勢いをつけて押し寄せて馬が上手く操れない者にとっては、馬の背の高さから振り落とされ、欄干を越えて自身だけが川に落ちて鎧の重さで溺れることにもつながった。

本来は通常の矢では大した被害を受けることなく橋を越えられると思っての、重騎兵の突進であったが思わぬ攻撃により本当の意味での立ち往生になっている。


川の両岸の兵士たちは互いに50~100mほどの幅にもなるため、矢が届いても通常の盾で守ることができるため、先に陣地を築いていた王国側は身を守りながら、対岸の帝国に矢を射るが、致命傷にはなっていない。

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