第322話 ヴェシン伯爵邸

2台の馬車で貴族街に入って行き、フェルールの家に到着する。

サラたちはヴァーヴ伯爵家の屋敷を知っているが、それに負けず劣らずの立派な屋敷であった。


門からも距離がある建物に入ると大きな玄関で執事達が並んで挨拶をしてくる。取り巻きであるディアリスとアリアンヌは慣れたものであるが、サラたちは不慣れで戸惑う。

そのまま来客室に案内されると、ワチエダンジョンで一緒であったセドリック、ジルベール、ランベールの3人が待っていた。


セドリックが口火を切り挨拶を進める。

「入学時にも一部の顔合わせをできたが、改めて挨拶をさせて頂こう。ダンジョンの時は大変お世話になった。あの時や魔術学校では家名の紹介は出来なかったが、本日は正式な紹介をさせて頂く。こちらはヴェシン伯爵令嬢のフェルール・ド・ヴェシン様。フェルール様のご学友は、ディアリス・メーヌ様はヴェシン伯爵の寄子メーヌ男爵令嬢、アリアンヌ・ガニー様はヴェシン伯爵の寄子ガニー騎士爵令嬢。私はヴェシン伯爵騎士団の騎士爵セドリック・ブレイユ」

「久しぶりだな。ジルベール・パントだ。ヴェシン伯爵騎士団の騎士爵の次男だ」

「久しぶりですね。ランベール・パントです。ジルベールとは双子の3男です」

「お久しぶりです。サラ・ドラセムです。ヴァーヴ伯爵家の寄子の騎士爵になります」

続けて、ハリー、リリー、カーヤも改めて挨拶をする。


その後は堅い話もなく、昼食が運び込まれて、食事を取りながらワチエダンジョンでの苦労の話や、ジルベールが所持することになった氷の魔剣の話など昔話になった。学友のディアリスやアリアンヌは冒険者登録をしての訓練はしていなかったようで、ダンジョンの話に目を輝かせて聞き入っている。


ふとした時に、ランベールから

「サラ様が騎士爵の当主ということは、ジルベール、私たちより身分が上になったけどどうする?」

「う、分かっている」

「え?今まで通りでお願いしますね」

とジルベールとサラの対応を想定した上での振りもあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る