第297話 中級風魔法

魔術学校を目前にして、リリーには少し焦りが出てきた。比較対象がサラと、ワチエダンジョンで一緒になったフェルールしかいないため、初級魔法しか使えない自分が行って大丈夫なのか、という不安である。

水、風、火、光と4属性を覚えてきたが、一番使えるのが風属性であり、この中級魔法を覚えたいと思うのであるが、サラも風属性は初級までしか使っていない。


以前に風魔法≪必中≫を覚えるとき、サラに先に覚えて貰ってから指導して貰ったので、同様にできればと考える。

サラを誘って魔術師委員会に行き、風中級の指導を仰ごうとするが中級の指導者は少なく今は在籍していないと言われる。図書館の閲覧可能な魔導書の中にあるはずと言われて見に行くと、見つけられたのは≪風盾≫というモノであった。説明を見ると、矢などの軽い物体から身を守る盾を作り出すようである。

貸し出しは許可されてないため、サラが魔術語や魔法陣をメモして帰る。


家の庭で何度か試すが、実物のイメージが無いため何となく違う気がする。そこへ魔剣ストラデルが『我が見本を見せてやろう』というので召喚すると、中級の属性魔法ぐらいならと

≪風盾≫

と実演してくれる。さすがだね、と褒めて魔石をご褒美にあげておいて、

≪風盾≫

を発動する。先程までと違い、実物を見たのでしっかりした厚みになっており、リリーに試しに小石を投げて貰っても弾き飛ばすことができた。


次は本題のリリーである。リリーも実物をみてある程度のイメージは出来たものの、同じ空間に風を留まらせることの感覚が上手く行かない。サラに何度も実演して貰っても、少しずつしか上達しないで焦りが出てくる。

サラは自身が発動した盾のところにリリーも重ねて発動しようとすると、感覚がつかめるのではないかと提案する。やってみるとリリーは理解したと思った瞬間に風が暴走し、庭の諸々を撒き散らかしてしまった。

それでも一度つかんだ感覚は次から有効で、その日のうちにそれっぽく≪風盾≫を発動できるようになり、後は訓練するだけになった。

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