第248話 寄親

約1ヶ月かかる伯爵領都と王都であるが、ほぼとんぼ返りのように伯爵領都に帰って来た。馬車や宿の中では往路と同じく魔力操作の訓練などを行うしかできず、サラは≪結界≫と魔法回復薬の調合の習熟を、ハリーとリリーとカーヤは≪肉体強化≫の習熟と合わせて使用済み魔石への注入が主な内容となった。

ゴーチャンは領都に帰った翌日に、領都の中央にある伯爵の館に来るように言って別れる。伯爵に対談の段取りを取るとのことである。


おかげで帰省の夜は皆が保護者宅に帰ることになった。カーヤはまたハリーたちの実家の宿に泊まる。

サラは師匠エミリーに、ゲレの街でのオーク氾濫や2つ結合ダンジョンの踏破、それから王都での叙爵などをかいつまんで説明する。エミリーはゲレの街の経緯と王都に騎士と一緒に行った旨は情報収集していたので、最後の叙勲も何となく可能性として認識していたが、初耳として驚いたふりをする。その上で

「貴族になる選択肢も良いかもね」

と言う。サラは、エミリーがAランク金級冒険者であるので似た機会もあったであろうに今が在野ということは、エミリーは選ばなかったのだと理解する。まぁ自分も選んだわけではないのだがと思いつつ。


翌日、できるだけきれいな服装で4人そろって伯爵の館に訪れ、ゴーチャンに連れられて、謁見室に向かう。さすがに王城ほどではないが、それでも立派な屋敷と謁見室である。

「よく来てくれた。私がマクシアン・ド・ヴァーヴである。」

「サラ・ドラセムでございます。ヴァーヴ伯爵、この度の寄子のご承認ありがとうございます。今後とも何卒よろしくお願いいたします」

「うむ、我も強い魔法使いは大歓迎である。エミリーの弟子なのだな。この度のゲレの街を守った働き、助かった。これからもよろしく頼むぞ。ただ、サラはまだ若い。冒険者としても自由に成長するが良い」

と謁見も無事に終わる。


「ルメジョン騎士爵、この度は色々とありがとうございました」

「うん、これからは同格なので気を使い過ぎずにな。先輩として頼ってくれて良い」

とゴーチャンにもお礼を言い別れる。

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