第187話 セドリック脳内
サラによるフェルールへの魔法指導を目の前で見ていたセドリックは、見た目以上に驚いていた。
最初はハリーと言う男1人のリーダーの無難な受け答えが目立ち、サラのことは地図の精度が高くて地図複写が素早い娘ぐらいにしか思っていなかった。しかし戦闘を目の前で見ると、10歳ほどにもかかわらず中級水魔法≪氷刃≫と中級火魔法≪火炎≫それぞれの同時発動を無詠唱で、しかも魔力回復薬による補充なしで数えきれないほど行っていた。
それだけでも驚きであったのに、ダメもとで依頼したフェルール様への魔法指導においては独自の理論を持っているようであり、非常に効率的にたった2~3時間程度で新たな属性の水魔法を習得させていた。あれだけ多くの講師に断られたフェルール様との会話に苦労することなくの短時間指導である。また、見本の提示の際に、魔法発動体を使用した気配もなかった。
さらに、見せている程度は大したものでは無いと思っている節があるほどの何かを隠しているようにも見受けられる。
魔術学校でフェルール様の目の上のたん瘤になる程度の話ではなく、国内で別貴族の派閥にとられるならまだしも、他国にとられると国家の損失になる可能性も、と考えてしまう。将来の成長度合いまでは確約できないが、現段階でも唾をつけておいて損が無いと思える。
急いで、自身の寄親でありフェルールの親である伯爵に、ダンジョン攻略中に助けられたことも併記して手紙を送らないと。
また、ジルベールの悪い部分が今後の関係性に多大な悪影響を与えることになっては大問題であり、ランベールとともにジルベールにはしっかりと含みおくように指導しておかなくては。
あと、サラ殿に言われたフェルール様の魔法発動体を早々に探して購入しておかないと。
今日は何と大変な日だ。
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