第145話 見張り骸骨

翌朝もそれぞれが神殿で、昨日の盗賊撃退成果のお礼と今日からの無事を祈願してから、ダンジョンに向かう。


今日の地下4階からは草原ではなく洞窟であるとの事前情報である。草原と違い、斜めに進むなど最短経路を取ることができないため、購入した地図でなるべく早く5階にたどり着く経路を事前に確認しておく。


この階層では蝙蝠と魔鼠が出るとの情報であり、それほど訓練になるわけでもないため、入らなくてよい部屋には寄らず、可能な限り通路のみで階段を目指す。

草原では他冒険者と遭遇しても距離もあり、互いに干渉しないように距離を保つことができたが、洞窟では距離を取ることができないため、ときどき出会う他冒険者には気をつかう。互いが盗賊である可能性を否定できないためである。


そのため、元々通ろうとしていた通路で他冒険者が戦闘時には遠回りをする、通常時であればすれ違いを慎重にするなど、当初予定より時間がかかってしまった。

可能であれば今日中にこの階層を終わり、出口から帰ることも期待していたが、下手に焦って失敗するよりは、とダンジョン内で野営することになった。


小さな部屋を探し蝙蝠などの魔物が居ないことを確認して、焚火を用意する。久しぶりのダンジョン内の野営であり、このダンジョンでは魔物以外に盗賊も危険な相手であり、哨戒(しょうかい)としてサラは思いつく。

「驚かないでね」

とハリーたちに言い、魔鼠の死骸を取り出す。

『死霊魔法、よろしくね』

『盗賊の魂もくれないで、こんな時だけ』

『盗賊は生きたままでの売却費は高いから、先行投資と思ってよ』

≪骸骨≫

最初は死骸から肉が消えて骨になるだけだが、2度目は少し動き、3度目には完全に動く骨の魔鼠が誕生した。以前は魔法陣を使ってようやくであったのが、魔剣のお陰で死骸と魔力だけで実現できた。

「すごいな、これ」

「人前ではできないね、いろいろと問題になりそうで」

「これに見張りをさせるね」

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