第138話 高級武器

冒険者ギルドでの情報収集の最後に、宿屋について教えて貰う。

費用も質も幅広くあるが、初心者は無難な宿屋を選ぶべきとの助言に基づき、ギルド紹介の1泊1銀貨/人の個室を選ぶ。ギルド職員が、身長も低い子供だけは舐められる、質の悪い住民に狙われるという旨を婉曲な表現で助言してくれたこともある。


まずは宿屋に5日分の申し込みをして、夕食・朝食がついていることを確認する。背負子などの荷物を部屋に置いた後、3人はそろって街中の店舗を確認しに行く。

初心者が掘り出し物を狙うことはせず、武具屋、雑貨屋、魔道具屋などの定番の店舗、良心的な店舗を、ギルド職員の助言に基づきまわることにする。


ハリーはスモールシールドの高級品、リリーはショートスピアの高級品を武具屋で購入する。先日の盗賊退治で得られた金貨を使ってしまったが、それだけの性能があることを期待する。

また、ダンジョンで何かあり壊れてしまう可能性もあるため、従来使用していたものは下取りに出さず魔法の袋にしまっておく。盗賊退治の際に得た高級品に交換したときに、エミリーが中級品を魔法の袋に収めておいてくれて今回の出立時にサラの魔法の袋に入れてきたのと同じ発想である。


サラは既に武器は魔剣と高級品の短剣を所持しているため、武具屋は2人への付き合い程度である。リリーは消耗品の矢をたくさん仕入れておく。

通常の冒険者が補充する魔法回復薬はサラが作成できることもあり、雑貨屋も眺めた程度で、魔道具屋を丁寧にみる。ハリーが所持している筋力向上の指輪など、冒険に役立ちそうなものは費用対効果を踏まえると、自分たちの所持金ではまだまだ先送りであると改めて考えさせられる金額であった。サラは魔導書にも興味をひかれたが、師匠エミリーが習得済みのものがほとんどであり、回復魔法などは魔法回復薬で代替できるということから低優先に考えてしまう。

その中で、付与魔法の魔導書が目に入る。既に所有している魔導書のうち、水精霊魔法、空間魔法、悪魔魔法のように複数魔法の記載された厚みのある魔導書と違い、≪骸骨≫のときの死霊魔法の魔導書のように、1魔法だけの薄い書籍であった。ただ、アンデッドのダンジョンで苦労させられたときから探していた≪炎付与≫の魔導書であり、金貨を消費することになるが迷いなく購入することにした。恒久付与ではなく一時的な付与ではあるが、以前の苦労から非常に有用と思われた。


その晩、通常短剣を練習台に≪炎付与≫を習得するまでサラは頑張るのであった。

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