第121話 乗合馬車
サラの故郷の村に向かう方向での、次の街までの商隊護衛は見つからず、乗合馬車を使用することにする。
ハリーとリリーは、街の間の移動として商隊護衛は経験していたが、乗合馬車は初めてであり緊張していた。通常は乗合馬車のみの経験が多いのだが、少しでも稼ぐ商隊護衛ばかりしていたことになる。
乗合馬車は、見知らぬ者同士が運賃を払って乗るものであり、護衛はつかないのが普通であり、乗客である冒険者などが魔物などを対処することが多い。そのため、基本的には安全な経路だけで乗合馬車の運行をしている。
今回の同乗者は、小さな娘を連れた母親、フードを深く被った女性のみであった。
人付き合いが上手いハリーが早速話しかけ、
「俺たち4人はメンバの故郷に帰るところだけど、皆さんは?」
「隣街の母の具合が悪いので、娘を連れて様子を見に行くところです」
「旅」
と、フードの女性はそっけない。
途中の野営などでは、商隊護衛のときには商隊側が食事の提供をしてくれたが、乗合馬車の場合には食事は自身で用意する。
焚火で調理をしながら、すっかり仲良くなった小さな娘と話しているハリーとリリー。御者は馬や馬車の手入れをしている。薬草採集のため散歩をしているエミリーとサラは無口な女性を見かける。
小川で洗顔などをしているようであり、フードを外していた。そのため、とがった耳があらわになっていた。
「何を見ている?」
と気づいていたようで、その女性から声がかかる。
「失礼した。薬草採取で散歩していたら見かけただけなんだ」
とエミリーは答えつつ、
「もし良ければお話をさせて貰えないか」
と言い、川縁に座る。
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