第65話 辺境

エミリーは5年ほど前、サラの母親であるローラに会いに辺境まで旅をしていた。


古い付き合いであるローラは、魔法使いであったが狩人と結婚し辺境で暮らしている。子供も男、男、女と3人も生まれたと手紙で書いてあった。

魔術学校の同級生であったローラは、どちらかというと学者寄りの魔法使いであり、村の近くの遺跡調査をしているうちにその狩人と知り合ったと聞いている。


エミリーも冒険者として活動していたので、依頼でパーティーメンバと辺境に行く機会もそれなりにあったが、暮らすことのイメージは湧かない。さらにパーティー行動ではなく一人での移動のため、ここに来るまでにも軽い男から絡まれ続けたことも苦痛であった。客観的には金髪美人が一人旅であると声もかけられるのも仕方ないと思われるが、主観的には我慢ならないことであった。


乗合馬車や商隊護衛に混ざって近くの街までは何とか来られたが、そこから先は定期便もないとのことで馬を借りてローラの住む村までの移動中である。

辺境であり、魔物だけでなく通常の狼などにも襲われる地域ではあるが、細いなりにも街道であることから、最低限の襲撃で済んでいる。またそれぐらいであれば、冒険者であり水の攻撃魔法で何とか撃退している。


その村は山のすそ野の森の中にあった。「龍の爪先」という名前であり、その山には龍が住むからだと言う。

村の入り口でローラの名前を言い、家まで案内して貰い、ようやくローラに会うことができた。相変わらずの銀髪美人であった。

「本当にこんなところまで来たのね」

「もちろん、ローラに会うためならね」

「よく来てくれたわ。ありがとうね。主人と息子たちは狩りに行っているけど、これが末っ子のサラよ」

「お母さんの友達のエミリーよ。よろしくね」

と母似の銀髪の幼女と挨拶をする。


辺境であり宿など無い村であるが、田舎なだけあり個々の家は大きいためローラの家に泊まらせて貰うことになった。

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