初級冒険者サラ

第64話 出発


魔の森に近い街ゲレへの商隊護衛として出発するサラ達を見送るエミリーたち。


ハリーとリリーは、両親から何かあったときのためにと手形を貰う。

金貨以上の貨幣はあまり普及していなく銀貨以下の貨幣ではかさばるため、長距離移動などでは複数の手段が取られる。冒険者など一般的に用いられるのは、かさばらなくて換金性の高い宝石や高ランクの魔石に変えて持ち運ぶというものである。

これに対して、商業者ギルドでは契約魔法の一種の手形も用いられる。これは受取時に、手形に血を垂らして受取人であることを示さないと換金ができないものである。宝石や魔石では換金する者が交渉下手の場合や価値を正しく知らない場合などに買い叩かれる心配があるが、手形の場合は商業者ギルドに契約魔法分の手数料は必要なものの確実に記載金額が受け取れる利点がある。

宿屋を営む両親は商業者ギルドに所属しており、その利便性を理解しているため手形にしたのである。

ちなみに受取人はしっかりしている妹リリーになっている。


エミリーはサラに魔法回復薬を入れるウェストポーチを渡す。中には、サラがまだ作れない高級を10本、特級を1本入れてあると伝える。サラの左ほほを撫でながら、

「ごめんね、サラ。この火傷痕は特殊で、特級でも治してあげられない。今まで調べてきたけど、おそらくは悪魔魔法的なものと思うの」

と告げられたのに対して

「ううん、大丈夫。ありがとう」

とだけ半泣きで答える。



それぞれ保護者との別れも済まし、6台の馬車の商隊に分かれて乗り込む。3人パーティーの冒険者が二組護衛に着く、少し大きめな隊列となっていた。先輩冒険者が前3台に、その後ろにハリー、弓を持ったリリー、気配察知ができ魔法攻撃もできるサラが最後尾で乗り込む。



エミリーはサラたちの商隊を見送りながら、昔のことを思い出す。

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