第31話 兆(きざし)
角兎については、今回も肉と毛皮は兄妹が引き取り、魔石と角は均等に割り、角をそれぞれが討伐証明として冒険者ギルドに納品、最後に余った魔石と角の1つずつはサラが貰うことにした。
猪の魔石と牙はサラ、肉は兄妹、毛皮はボロボロながらに討伐証明になったので冒険者ギルドに納品とした。
3人はそのまま雑貨屋に行き、ハリーとサラは背負子を購入した。リリーは矢筒と、ときには弓も背負うため残り二人だけにした。
これは、今後も戦果を持ち帰る際に少しでも換金できる物を持ち帰るためである。
3人とも急成長の対価として、武具の新調や冒険者ギルドでの師事などに、今までに貯めたお金をだいぶ吐き出してしまったので、少しでも稼ぐためである。
その意味で猪の素材を一部捨ててきたことが悔しく、次回こそは、という思いである。
英雄譚や先輩冒険者の話に出てくる、空間魔法によりたくさん物を入れられるという魔道具の袋が欲しいと思うようになった。
また、少しでも稼ぐために、討伐証明に認められる部位や高く買い取って貰える部位について、自分たちが遭遇しうる魔物に対して改めて勉強することにした。
□
夕食でサラから今日の報告を聞いたエミリーは、猪との遭遇に驚きながらも成果が出たことも含めて安堵するのであった。
夕食後、サラは戦果の整理やローブやブーツの手入れなどを始めた。
机の上に猪の牙や魔石を並べて数えてから、短剣の手入れをしている途中にエミリーからの声掛けがあり抜身のまま短剣を机の上に置いて、席を外した。
戻ってきた際、短剣の刃に触れていた角兎の魔石の1つが力を失ったように無色透明になっていた。疑問に思いながらサラは短剣の手入れを続けるも、こころなしか短剣の傷みが無くなった気がした。
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