第30話 解体


流石に被害無で猪を倒しきることはできなかったが、大怪我にまではならずに済んだ。


あちこちに小さな傷を負ったハリーには、サラが≪治癒≫を何度もかけた。何度もかけるうちに段々とハリーの魔力の波長を理解して覚えたことと、実戦で習熟したことなどから、1回の≪治癒≫での傷の治りは良くなって行った。

また巨大な体での攻撃であり、見えない内出血なども心配し、3人とも念のためにサラ特製の魔法回復薬を飲んでおいた。


「やったな!俺たちもいよいよDランク魔物を討伐か。鉄級も間近だな」

「調子に乗らない!ワイルドボアは所詮Dランク下位だし、1頭を3人ではなく単独討伐でないと鉄級冒険者にならないでしょ」

「わかっているよ」

と、いつものように調子に乗るハリーと冷静なリリー。サラもそのやり取りをみて笑っている。

今回は初見であり苦労したこともあるが、猪は攻撃も基本的には単調であることから、Dランクでも下位に位置づけられる。早く単独討伐できるようになりたいとそれぞれ思うのであった。


そうこうして一休みできたところで、猪の遺体を岩場まで引きずって行き、頭を下になるように岩場にもたれさせ、首から血抜きをする。

まず胸を切り開き、魔石を回収する。そこから皮をはぎ、骨と内臓をはがしていく。肉をある程度の塊ごとにまとめ、顔からは牙を抜く。

既に慣れていた魔物でない兎の延長であった角兎の解体と違い、巨大な体の解体には3人がかりでも四苦八苦した。有効活用できる素材の勉強もまだまだである3人は、魔石、牙、肉、毛皮以外は捨てていくことにした。

先に角兎も16羽しとめていたこともあり、そちらもいつもの魔石、角、肉、毛皮だけ持ち帰ると、3人とも背負袋に収まらない量を抱えることになった。


その状態で魔物に襲われたら初動が遅れる心配はあったが、幸いに無事に領都にたどり着くことができた。

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