第5話 素材売却


若くない女性ギルド職員アンリが、

「あらたくさん頑張ったのね。ちょっと待ってね」

とカウンターの素材を受け取り、奥の職員に渡してから、

「薬草は傷回復用と魔力回復用でそれぞれ採取依頼も出ていたので依頼達成料として20銅貨ずつ。華は熱冷まし用で10銅貨。水蛇は魔石と牙がないのと、皮が傷んでいるので50銅貨。合計してちょうど1銀貨ね」

と、銀貨1枚をカウンターに乗せた。


貨幣の種類は、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、ミスリル貨であり、下の貨幣100枚で上の貨幣1枚となる。1ミスリル貨=100金貨=10,000銀貨=1,000,000銅貨=100,000,000鉄貨である。円形の貨幣だが、半円形で半分の価値の半銀貨=50銅貨、半銅貨=50鉄貨などもある。鋳造国により刻まれる文様は異なるが、価値は同等である。

一般市民の外食が数枚~10枚の銅貨、普通の職人日当が数十枚の銅貨~1銀貨であり、一般市民が生活において金貨を使うことはなく、ミスリル貨を見ることは一生ないことも普通である。


今日は薬草2種類の採取が当初の目的であり、師匠指示の分も含めると80銅貨分の成果であったのが、偶然の熱冷まし用の華と蛇のおかげで多くの小遣い稼ぎとなった。

顔には出ないが内心では喜んで

「ありがとう」

とだけ言い銀貨を受け取る。

アンリは

「魔石と牙もあるならば、もう20銅貨追加だけど」

と言うが、言葉に出さず首を振って断り、冒険者ギルドを出た。


ギルドから街路に出ると既に夕方で日も暮れかけており、師匠の店舗兼住宅に急ぎ帰ることにした。

空腹を思い出させるような屋台からの香ばしい匂いも我慢して早歩きをしたおかげで、何とか陽が落ちる前に帰り着くことができた。


魔女エミリーの店舗は、冒険者ギルドのように大通りではなく、表通りから1つ裏に入った少し薄暗い小路にある。店舗名を掲げてはなく、魔法陣を表す丸看板だけが表にかけてある。

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