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「へぇー、じゃあナギのギルドはまだ3人しかいないのか!」
「はい。なので、今回は協力しませんか?…今回のイベントは8人までが勝利することが出来ます。俺達のギルドは3人なので、協力者が増えるのは有難いですし、他の参加者は皆どこかのギルドに所属しているでしょうから」
「その申し出は嬉しいけどよ…正直オレ達、役に立たないと思うぜ?」
「うんうん、ボクとラグちん…激弱ですぜ?」
俺はラグ、ナノンと共に草原地帯から更に北上し、再び木々の生い茂る森林地帯へと踏み入っていた。歩きながら二人と色々話をしていた成り行きで、俺は協力関係を結ぶことを提案した。
「オレとナノンはEランクの生産職…所謂“はずれジョブ”だ。そのせいでオレは一緒にニューワールドを始めた仲間と結成したギルドから追放されて……今は独りモンだ……」
“ニヒヒ”と、ラグはどこか寂しそうに笑った。
「独り者?…ナノンさんはお仲間では?」
「んーん、ボクとラグちんはこのイベントが始まってたまたま出会って…仲良くなりました!ぶい!」
にこやかにピースサインを向けるナノン。え、そうなの?
「まさかオレと同じような奴が参加してるとは思ってなくて驚いたぜ…それでなんとなく行動を共にしてたんだが、“土竜夜盗団”に見つかって…」
「デス鬼ごっこでした!いぇーい」
「は、はぁ…」
聞くところによると、ラグとナノンは二人とも俺達よりも早くニューワールドをプレイしているらしい。だが、ニューワールドでの“生産職”は扱いが悪いようで、二人共ギルドに所属できず、各々ソロでひっそりと活動していたんだそうな。
「生産職系のジョブは戦闘に使えるようなスキルは殆ど習得できなくてな…パーティも組めなきゃ経験値を稼ぐのも難しくて…」
「ふふん!まぁ、生産職は“物を造る”ことでも経験値を得られますがね!」
「前向きだな、オマエ…」
対照的なテンションの二人。でも…
「…なぜ、生産職は敬遠されるんですか?」
「そりゃあ戦闘じゃ役に立たないですし?鍛冶師や料理人ならNPCの店がありますし。例えば武器一つ作るにしても、ある程度の材料や道具が揃ってるNPCの店に頼む方が効率的だったりするわけなんですよ!いやー世知辛い!!」
「…ネガティブな話を楽しそうに話すな、オマエ」
「人生楽しく!が、モットーですので!」
…生産職が嫌われ者ねぇ。なんか…気に入らないな。
「こんな事聞いたら失礼かもしれませんが、二人はなぜこのイベントに出場しようと思ったんですか?」
俺の問いに、少し間を置いてラグが答える。
「実はオレ、リアルでも料理人なんだよね。小さい店だけどな…」
「そうなんですね!」
「うおっ!
「え、なんだそれ?…とにかく!オレは料理人という仕事が好きだ!美味いものをお客に食わせて笑顔にさせる!こんなに楽しくて、誇らしい仕事は他にねぇ!!…と、俺は思ってる!」
「おおうっ!急にラグちん熱いっ!!」
「ニューワールドを初めて、最初のジョブの選択肢に“料理人”が出てきたとき、オレは迷わず選んだ!そんな料理人が…Eランクの役立たず扱いだとぉ!?オレは認めねぇ!」
「そーだそーだ!!」
情熱的に感情を表すラグと、それを
「だからオレはこのイベントでどうにか結果を残して!オレ達生産職系のジョブを馬鹿にした奴らを見返してやる!!……と、思ったんだけどな…現実は……厳しかった、ぜ…」
「およっ!?ラグちんがしぼんだ!?」
ちょっと短絡的で、感情的に動いてしまうラグ…でもきっと、優しい人なんだろうな。落ち込んだ背中をナノンに
「おーい?…ラグちん戻ってこーい!」
「……そういえばオマエは?…なんでイベントに参加しようと思ったんだ?」
沈んでいたラグが顔を上げ、ナノンに訊ねる。
「え?……楽しそうだから?」
「お…おう。そうか…」
「…アハハ!」
二人の問答を見ていて、思わず笑いが零れる。やっぱりこの二人は、嫌いになれそうにない。
「是非、見返してやりましょうよ。協力して勝ち残りましょう!ラグさん、ナノンさん」
「………」
俺の言葉に顔を見合わせるラグとナノン。
「よろしく!ナギちん!!あとボクのことはナノちんと呼んでおくれよぅ」
「…よろしく頼むナギ!オレのこともラグと呼んでくれ!敬語も要らねぇ!」
「…わかった。よろしく、二人とも!」
「あいあい!!」
「おう!」
こうして…俺、ラグ、ナノンの臨時パーティが結成された。
「とは言っても、オレ達に出来ることなんかないかもしれねぇけどなー…」
「出来ることはあるよラグ。早速、ね…」
「「?」」
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