非戦闘員〈ピックアップ〉
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俺はノノとマイルと合流すべく、深い森の中を北に向かって20分程進んだ。周囲に気を配りながら、細やかな起伏の多い地を踏みしめていく。最初にプレイヤーに遭遇してからここまで、運が良いのか悪いのか、他のプレイヤーと出くわす事はなかった。だが時々、ふわふわと漂う赤や青色の風船状のモンスターとは遭遇したので、見つけ次第討伐した……と言ってもこのモンスター、ちょっとつついただけで割れるのだが…。
「……お」
暫く歩くと、木立の隙間から陽光が差し込んでいるのが見えた。もうすぐ森林地帯を抜けるな…不思議なくらい何事もなかったけど。そんなことを考えている内に森を抜け、視界が一気に開ける。見通しの良い草原地帯に出たようだ。ここで俺は直ぐに警戒態勢に入る。視界の先数十メートルに、プレイヤーの影を発見したからだ。
「………」
影は六つ…俺の方に向かって勢いよく近づいてくる。六人相手は流石に分が悪い…か?一度森に戻って身を隠す?……いや、向こうが俺の存在に気付いていない保証はない。それならばいっそ先手を…ん?
「ヒャハハー!オラオラ逃げろぉ!!追いついちまうぞぉ!?」
「ぐっ!…くっそ!!」
「うわああぁぁんもう!!ガラ悪すぎですだぞぉ!!」
六人の集団かと思ったが、どうやら違うらしい。正確には二人のプレイヤーが四人の集団に追われている構図のようだ。前を走る二人の男女と、それを追う四人の男。俺はまず前方の二人を注視する。
逆立った黒髪と額に巻かれた赤いヘアバンドが印象的な男。特に防具のようなものは身に着けておらず、黒いシャツにカーキブラウンのカーゴパンツ…武器らしきものも所持していない…。なんか、現実世界で普通に歩いてそうな格好だな…。その男は顔を歪めながら、必死に走っている。
その隣を薄紫色の髪を振り乱し駆ける少女…。隣の男とは打って変わって首から下はライトアーマー系の装備でびっしりと固めてあるのだが…。色合いも素材もバラバラ…なんというか、『その辺にあったものを寄せ集めて無理やり装備しました』とでも言うような、つぎはぎ感抜群の装い。そして背中には、小柄なその少女とは対照的に、圧倒的な存在感を放つ大振りの
「なん…だ…あれ?」
思わず言葉が口をついて出てしまう。それほどにその二人の出で立ちは、他の
「え…?」
赤いヘアバンドの男…レベル21、【料理人】Eランクジョブ、ギルド“無所属”。
つぎはぎ装備の少女…レベル23、【鍛冶師】Eランクジョブ、ギルド“無所属”。
「おー…マジか…」
明らかに、高レベルプレイヤーがひしめくこのイベントで戦えるようなステータスではない。まさかレベル20代の参加者がいたとは…。どうする?…あの様子ならまだこちらには気付いていないだろう。このまま身を隠すか?…。そんなことを考えながら、俺は残りの四人に目を向ける。
「……」
四人ともレベル60を超えている。ギルドは…“
「めんどくせぇなぁ!あらよっとぉ!」
「ぐあああぁっ!!」
「ああ!!ラグちん!!」
二人を追う四人の内の一人が、投擲用の小型ナイフを投げつけ、ヘアバンドの男の
「ハッハァ!!命中!…どーよ?苦痛薬の痛みはァ!?」
!…やっぱり、苦痛薬か。俺はガザックの姿を思い出した。苦痛薬…プレイヤーの感じる“痛み”を増幅させるアイテム。下らない物使いやがって…
「あーあ、逃げ回りやがって…手間かけさせんなよな」
「よし、片付けるか。ポイントはオレが貰っていいか?」
「ふざけんな!ひとり寄越せ!女はオレがやる…へへ」
四人の男は二人を取り囲み、下卑た笑みを浮かべる。ヘアバンドの男は悔しそうに顔を歪め、少女は怯えた表情…
……【
「ヒヒヒ!!んじゃ…早速……ぐあぁっ!?」
「なんだ!?」
つぎはぎ装備の少女に近づいていった男の背中に、突如飛来した矢が深々と突き刺さる!…というか、俺が放ったんだけど。
「なんだテメェはぁ!!!?」
四人の男の視線が、矢を放った俺に集まる。あー…つい、衝動的に攻撃しちゃった。これで隠れてやり過ごすプランは無しになっちゃったな。
「あーごめん、気付いたら…撃ってた。てへへー」
「なめてんのかテメェはああぁぁ!!!」
背中を射抜かれ、俺の言葉に激昂した男が俺に接近してくる。よしよし、一人で突っ込んでくるなんて…偉い偉い。男は短剣を逆手に持ち、振りかざす。
「死ねや!!」
瞬間、接近してくる男に対し、こちらも急接近。男は面食らった表情。まぁ遠距離戦タイプだと思ってたプレイヤーが自ら接近してきたら驚くわな。俺は一瞬で男の懐まで潜り込む。
「なっ!?…」
「【
“
「【
「ぐっああぁぁ!!……マズイ!回復を…」
俺の四連撃を受け、大きくダメージを受けた男は跳び退き、距離を取る。男はイベント開始時に支給されたポーションを取り出すが…
「…させないよ。【
再び“夜の徘徊者”にスタイルチェンジしていた俺は、矢で男が取り出したポーションの瓶を射抜く。瓶は砕けちり、消滅。
「はぁっ!!!?どうなって…」
驚いた男は瞬間的に硬直。そこを逃さず…
「…【
放たれた無数の矢が、男の全身を貫いた。
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