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「…うーん、イベント中はPKしても経験値やアイテムは入手出来ず、イベントのポイントだけが貰えるのか」
敵を撃破し、表示されたリザルト画面を見ながら考える。…この感じだと、魔石のドロップも無いかもな。ちょっと残念。
俺は剣を鞘に納めると、ツールボックスからイベント状況を開く。…お、俺のランキングが3位になってる。と思った矢先、すぐにランキングが更新され5位にまでランキングが下がってしまう。ランキングの変動が激しい…既にこの島のあちこちでプレイヤー同士の争いが始まっているようだ。ノノとマイルは無事だろうか…。
「さてと…」
とにかく、マイル達と合流を目指して北上しよう。他のギルドに所属している
俺はツールボックスを閉じ、深い森の中を歩きだした。
♦
その頃、島の南西、原野…
「へっへっへ!悪いなぁ兄ちゃん…アンタはここでリタイアだ」
雑草と
「おやおや…またお客様ですか」
背が高く、“細長い”という印象を受けるその男は、しかし堂々と、敵意剥き出しの三人に向き直り、穏やかな声を返す。
「…はっ!なんだコイツ?参加するイベント間違えたのか!?ここは仮装パーティーの会場じゃねぇぞ!?」
「ハハハ!違ぇねぇ!まあすぐに終わらせてやるから安心しな」
三人の男達はそれぞれ武器を手に、燕尾服の男との距離を詰めていく。
「…おい。でもコイツ、レベル72だ…結構高いぞ?」
三人の内の一人が警戒の意を示す。
「ビビんじゃねぇよ!こっちは運よくイベント開始後すぐに合流出来たお陰で三人……相手はたったの一人だろ!」
「そうだ!それにこれはチャンスだ!他の有力ギルドも合流する前に一人ずつ叩くことが出来れば、今回のイベント…イケるかもしれねぇぞ!」
「おうよ!…だからちゃっちゃとこの変装オタクぶっ殺して、残りの仲間と合流するぞ!」
警戒する一人に反して、残りの二人は前のめりの臨戦態勢。警戒していた男も渋々後に続く。三人と一人の距離が縮まっていく…。
「…はっ!よく見りゃコイツ、ジョブは【
「しかもギルドには“無所属”のソロプレイヤー!最初の獲物にはおあつらえ向きだ!」
「え?ちょっと待て…“奇術師”?……“ソロ”?…」
三人の内の一人が勢いよく駆け出し、燕尾服の男に急接近していく。対する燕尾服の男は…
「はぁ~…ジョブのランクやステータスなんて、表面上の情報だけで相手の力量を判断するとは、少々知性が足りないようですが…いいでしょう。私のショー……
頭のシルクハットを手に取り、そのまま胸へあてがい、芝居がかった恭しいお辞儀をしてみせた。駆けだした男が目の前まで迫り持っていた剣を振り上げるが、依然、燕尾服の男はお辞儀の姿勢のまま動かない。
「いつまでも余裕こいてんじゃねぇ!!!」
「おい!待て!コイツもしかして…!!」
三人の内の一人が剣を振るう男を制止する為声を上げるが、男はもう止まれない。振り下ろされる刃が燕尾服の男に届くかに思われたその時…
「あ、そこ…危ないですよ?」
「え?……」
振り下ろされたはずの剣が、否、腕が…持ち主である男のもとを離れ、宙を舞う。
「……い?…ぐわあああぁぁぁぁあ!?」
「な、何が起こった!?」
肘から先、片腕を失った男は声を上げて狼狽え、残りの二人は状況に理解が追い付かず、静止。燕尾服の男は微動だにしていない…にもかかわらず、攻撃を仕掛けた側の男の腕が切り飛ばされた。
「ぐうぅ!…くっ……そ…!!」
「テメェ!!何しやがった!?」
「や、やっぱり……お前は…!!」
「おや?もう私の
燕尾服の男が人差し指を立て、仮面で隠れた顔の前に持ってくる。
「……え?…なん…で」
次の瞬間、片腕を失った男の全身がバラバラに切り裂かれ…消滅。
「ひっ、ひいいいいぃぃぃいい!!」
「なっ…うわああぁぁぁあああ!!」
残った二人の内一人は腰を抜かしその場にへたり込む。もう一人は錯乱したように武器を振り回しながら突進。
「やれやれ…もう少しスマートにはいかないものですかね?せっかくのショーが…台無しですよ」
燕尾服の男が“パチン”と指を鳴らす。その瞬間、突進してきていた男の背中に火がともり、燃え上がる。
「は!?…なんっ…だよ!!これ!?」
火は瞬く間に男の全身を包み込み、男は悲鳴を上げながらのた打ち回る。
「さてお立合い!…タネも仕掛けも、ございません」
再び燕尾服の男が指を鳴らし、乾いた音が響く。間を置かず響き渡った炸裂音。火だるまとなった男が小さな爆発を起こし、消え去った。
「ま…さかほんとに…お、お前が…噂の……“死の
「おや、クランツにまで私の名が広まっているとは…なかなかどうして、嬉しいものですね」
震えて動くことのできない男に、燕尾服の男“ロイ・ジークフリード”はゆっくりと歩み寄る。
「うーん…華のないステージでしたが…」
「ま…ま、待って…」
「これにて…
「うわあああぁぁぁああああぁぁああ!!!」
広い原野に、断末魔が響き渡った。
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