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「ん?…あれ?…」



気が付くと、俺は一面真っ白な空間に立っていた。確か、ノノとマイルと…イベントの開始を待っていて…



「おっ!ナギ!」


「おわっ!マイル」



突如背後にマイルが現れる。続いてノノ…辺りを見渡すと、次々にプレイヤーがだだっ広い白一色の空間に現れてくる。これがイベントの転送か…。そうこうしてる内に辺りは数えきれないほどのプレイヤーで埋め尽くされ、ざわざわと喧騒に包まれていく。



「おぉ!凄い数いるなー!」


「これからこの人数と競い合うのか…」


「俄然…やる気…!」



ざっと見ただけでも100人は越えているな…。それぞれ個性的な武器と装い…バトスさんとの修行で俺のレベルは50に達したが……レベルも俺達より高いプレイヤーがほとんどか。



『全参加者、343名の転送完了。これより、イベントゲームを開始致します』


「!」



不意に響いた電子音声。その後、頭上に現れた頭だけのピエロに羽が生えたようなキャラクター…テック。



『皆!ニューワールドのイベントゲームにようこそ!!ボクはナビゲーターのテックだよ!』


「おっ!待ってました!」



テックが空間内隅々まで響き渡る声で話だすと、マイルがぶんぶんと腕を振り回す。



『それじゃあ早速、今回のイベントのルールを説明するよ!今回のイベントは…』



ここで大袈裟なドラムロールが鳴り響く。全プレイヤーがテックに集中する。イベントの内容によって戦略を立てなければ…



『…“バトルロイヤル”!総勢343名による生き残りバトルだよ!』



!…バトルロイヤルか。想定してた内容のひとつだが、割とオーソドックスなものだったな。



『舞台となるのは此処!』



テックの隣に大きなモニターが出現し、大きな島を映し出す。起伏はさほどなく平たい地形。画像で見る限り、森林地帯が多いようだが…



『この島の面積は約7㎢!皆はゲームスタートと同時にこの島のどこかにバラバラに転送されるよ!』


「おっ?バラバラに転送?」



…ランダムでの転送。ちょっと厄介だな…ゲーム開始後、なるべく早くノノとマイルに合流したいが…。



『転送が完了した瞬間からゲームスタート!皆気を抜かないように頑張ってね!次に詳しいルールを説明していくよ』



ここからが重要だ…。俺はテックの話に集中する。



『イベントの制限時間は無し!HPが0になったら脱落!が8名になった時点でゲーム終了!最後に残った8名には賞金やレアアイテムが送られるよ!』


「成績に応じて?…その成績って何なんだよ!?」



どこからか威勢のいい声が飛んでくる。



『まぁまぁ!慌てないで、そこも今から説明するよ!…まずこの島にはイベント限定のモンスターが出現するんだ。このモンスターを討伐する度に皆は“ポイント”を獲得できます!討伐したモンスターによって獲得できるポイントは変わってくるよ!ポイントを獲得できるターゲットとなるのはコチラ!』



島を映し出していたモニターの映像が切り替わる。



―――――――――――――――――

ブルーバブルン  …     1P

レッドバブルン  …    10P

シルバーバブルン …    100P

Evガーゴイル   …    150P

Evリザードマン  …    300P

プレイヤー    …    1000P

ゴールドバブルン …    5000P

?????    …   ????P

――――――――――――――――――



なるほど…ね。“モンスター討伐によって獲得できるポイント”なんて建前で…この表を見る限り、参加者プレイヤーを狩る方が圧倒的に効率がいい。ゴールドバブルンとかいうプレイヤーよりもポイントが高いモンスターもいるようだが…おそらく殆ど出現しないレアモンスター…だろうな。要するにガチガチのPvP対人戦だな、こりゃ。



『因みに、ポイントはターゲットに最後の一撃…とどめを刺した人にだけ加算されるから注意してね!あと、このポイント一覧はいつでもツールボックスから確認できるよ!』



テックがそう言うと、モニターは消滅。テックは続ける…



『生存者が8名になった時点でゲーム終了!生き残った8名が今回のイベントの勝者になるよ!生存者8名には賞金500万Gとレアアイテムが一つ送られます!』



周囲から歓声が上がる。500万…現実世界のお金に換金できるのを考えれば、興奮するのも当然の額だ。



『更に!生き残った8名の中で獲得ポイントが多かった上位3名には、追加の報酬が!第3位には追加賞金500万G!第2位のプレイヤーには追加賞金1000万Gと特別レアアイテムを追加で支給!…』



辺りが更なる歓声に包まれる。…なるほど、どれだけポイントを獲得したとしても最後まで生き残らない限り、このイベントに勝利することは出来ないってことか。…逆を言えば……



『そして第1位には……追加賞金2500万GとSが贈られます!!』



歓声が一際大きくなる。1位のプレイヤーは合計3000万G…大盤振る舞いだな。



『皆、燃えてきたぁ!?…でもまだいくつか注意点があるから、良く聞いてね?』



歓声が止み、静けさが戻る。



『まず、舞台となる島は大きな光の円に囲まれています!ゲームスタートと同時にこの円は少しずつ小さくなっていくよ!この円の外にいるとどんどんダメージを受けていくから注意!』



バトルフィールドが徐々に狭まっていくってことか…バトルロイヤル形式のオンラインゲームではよくある仕様だな。



『そして注意2つ目!イベント中はアイテムの使用に制限がつくよ!具体的には、回復系アイテムとレア度がB以上のアイテムは使用できなくなるんだ!皆、アイテムストレージを確認してみて!』



マジか…昨日HPポーションなんかもいくつか買い揃えたけど、無駄になっちゃったな。周りにも同じようなプレイヤーは多いようで、ちらほらと悪態をつく声が聞こえる。



「……」



アイテムストレージを開くと、確かにポーション系アイテムのアイコンに×印がついており、取り出せなくなっていた。



『その代わり!イベント限定のポーションを皆に支給するよ!それぞれHP、MP、APを全回復出来る3種類のポーションを1本ずつ支給するから、使いどころは良く考えてね!』



テックが言い終わると、アイテムストレージに“EvHPポーション”、“EvMPポーション”、“EvAPポーション”がひとつずつ追加された。俺はすぐにそれらをクイックストレージへと登録する。



『消費アイテム以外の、武器や防具の装備系アイテムには制限がつかないから、イベント中の装備変更も自由だよ!…さぁ!これでルールの説明は終わり!何か質問はあるかな?…』



しばらく待って、質問が上がらないのを確認したテックが意気揚々と言い放つ…



『よし!じゃあ皆!ベスト8目指して頑張ってね!それじゃあ…イベントゲーム……スタート!!!』



視界が、眩い光に包まれた。



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