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俺は再びレッドサイクロプスの懐へと飛び込んでいく。



やっばい……なんだこれ…



左下段から斧が来る!半歩下がって躱せ!…移動先に右の斧を合わせてくる!搔い潜れ!……今、ここっ!!…すげえ、防ぎやがった…ならここは!?……ハハ!じゃあ次…!!


俺の剣とサイクロプスの斧がぶつかり合い、金属音をまき散らし、火花が舞う。俺のHPは半分近くまで削られてきた。時折、浅いとは言え俺の身体に被弾する斬撃が鈍い痛みを与えてくる。そろそろ突破口見出さないと押し負ける…それなのに……楽しすぎるだろ!!


出会い頭のコイツのスピードには面食らったが、不思議と今は見える、視える、ミエル!!



「グガガアアアァァァアア!!」



またサイクロプスの攻撃速度が上がった。最初は余裕そうな態度だったコイツも、どこか必死の形相に見えるな。…でもまだだめだ、もっと鋭く、もっと正確に……もっと速く!!


!…少し下がった…逃がすな…追え!右の斧を引いた、警戒!…左に回避して、攻撃の終わりを狙え!…防がれた!…ここで剣を逆手に持ち替えて…意表を突け!


もっと速く…


両の斧同時の交差斬り!…躱せば隙がデカい、狙え!…スタンスを広げた、デカいのが来る!回り込んで背後に、気取られた!構わねえイケ!踏み込んできた距離を保て



『!!…マスターの脳の活性を感知しました。マスターの思考速度が急激に上昇しているようです』


もっと速く!!!


ここで蹴りかよ!…体制崩された、しのぎ切れ!返す刀で牽制しろ!横薙ぎ!受け流せ!


『マスター、ひとつ提案が…』

後にしろアド!今は割り込むな。


『了解。発言を控えます』



身体が伸びた!狙われる!右、いなせ、跳べ、突け、下がれ落とせ見切れ返せ来る左へ抑えろ刺せ誘え廻れ今!ココデ!……コエテイケ!!!


うおおおぉぉぉぉお、やっべえ…思考が……



「…止まらねぇ……!!」


「グギャアアアアアアア!!!」



サイクロプスの猛襲を潜り抜け、俺の剣が敵に届く。完璧なタイミングでの三連撃、ここに来て初の、文句なしのクリーンヒット!


俺の勢いに押され、サイクロプスは大きく後退し、仰向けに倒れた。



「…マジかよ。急成長にも程があるぞ、ナギ」



バトスさんが遠目から相変わらずの呆れ顔を向けてくる。でも…



「まだ、だろ…?」



俺は剣の切っ先をサイクロプスに向ける。サイクロプスはゆっくりと身体を起こし、手斧を握り直す。僅かに身体を震わせ、削れたHPを回復してしまうサイクロプス。やっぱりチマチマ削っても埒があかない…か。



「充分だ、ナギ。だがソイツを仕留めるには、流石に火力が足りない。今だけスキルを解禁しろ」


「…………」


「…ナギ?」



…すみません、バトスさん。それは了承しかねます。だって…レッドサイクロプスにも特殊攻撃はないんだ。ここで俺がスキルを使うのは“ルール違反反則負け”だろ!?



「来いよ、ひとつ目小僧…」



俺はサイクロプスに剣を向けて挑発する。



「ナギよ…お前ってそういう奴だっけか?」


「ごめんなさいバトスさん…でも今は、今なら…もっと成長出来そうなんです。思う存分、やらせて下さい」


「……だー!はいはい!だが、危険と判断したら俺が止めに入るからな!?」


「ありがとうございます!」



レッドサイクロプスが臨戦態勢に入る。いやー、良かったよ…此処でオマエと戦えて……俺はまだ、強くなれる。



「ふー……」



俺は深く息を吐いて、構えを取る。…さーて、第2ラウンドだ!!




俺が動くと同時にサイクロプスも駆け出した。距離が一気に縮まる。




その時、全ての音が…消えた。




な…んだ、これ?


最初は目で追うのも一苦労だったレッドサイクロプスの動きが、手に取る様に分かる…というか……遅い?


無音の中、明らかにスピードの落ちたサイクロプスの挙動が見える。…違う……無音じゃない…!あ、これ…





思考速度オレ”が速いのか!?





迫り来る斧を目と鼻の先で躱し、間髪入れずに斬り上げる!!



「グギャアアアァァア!」



ここで音も、サイクロプスの動きも正常な速度に戻る。なんだ…ったんだ?今の?…もしかして、俺、今…凄くね?



「は…ハハ!」



全神経が冴え渡るような感覚に、思わず笑いが溢れる。今まで味わったことのない高揚感と爽快感。…今の俺なら、コイツを封殺できる!



「ガアッ!!」

「なっ!!?」



突如、サイクロプスが両手の斧を地に叩き付けた!地面が派手に砕け、大量の土煙が舞い上がる。


このバカヤロウ!ちょっと調子良いからって余裕かましすぎだ!


心の内で自身を叱咤し、周囲を警戒するが、土煙に視界を遮られ、サイクロプスの姿を完全に見失ってしまった。我に返ったかのように目を覚ます危機感。


まずい!!奴は何処に…



「あ…れ?」



何と、言えばいいのか…見てないのに、視える!


俺の背後、サイクロプスが忍び寄り、斧を右上方に振り上げた。


そんな…見ていないはずの、しかし確信を帯びたイメージが頭に流れ込んでくる。俺はそのイメージに従い、半ば無意識に身体を沈ませる。


俺の頭上を通過する手斧の感覚…



「成程…これが…」



振り向き様に一閃!

黒羽の剣がサイクロプスの胸を横一文字に切り裂く!


サイクロプスは苦悶の表情を浮かべ、吼える。



「“気を読む”ってやつか…!」



片膝をつくサイクロプス。しかしすぐに自己再生して立ち上がる。火力不足…ね。



「行くぞ化け物…“次のステップだ”…‼︎」

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