おまけ マイルの修行模様
「着いたよ。ここがお前の修行場だ」
オレ、マイル。カルラの姉さんに修行をつけて貰えることになったんですが…
「か…カルラの姉さん……す、少し…休みませんか?」
「この程度でへばってんじゃないよ!こっからが本番だよ!」
半日近く全力で走り続け、現実世界と比べればステータスで大幅に強化されているオレの身体も悲鳴を上げる程の距離を移動し、辿り着いたのは絶壁の崖。崖の下は窪地となっていて、そこに広がる鬱蒼と木々が茂るジャングル…。てかカルラの姉さん、こんだけ走って息のひとつも上がらないとか…バケモノだろ。
「しょうがないね…3分だけくれてやる。その間に息を整えな」
「うぅ…へい」
日は既に傾き、もうじき夕暮れがくる。オレはその場にへたり込んだまま、眼下に広がっているジャングルへと目を向ける。熱帯林を思わせる独特な形の植物、木々の奥に広がる闇。その闇から感じる“気配”……うん、絶対ヤバい…間違いなく、ヤバいのがいる…それも沢山。
「ここは“フレンジーテーブル”と呼ばれる密林地帯…センターギルドの許可が無いと立ち入ることも許されない危険区域だ」
「…ふれんじー…?」
フレンジーって…フレンド?…うぇーい!皆トモダチ!…的な?
いや、でもあの密林の中から感じる気配は全然フレンドリーな感じしませんけど?
「お前の武器はなんだ?」
「え?…大剣ですけど」
「そうじゃない。例えばナギなら冷静な思考力と判断力、ノノって子は応用力の効いた戦闘スタイルが武器と言えるだろう…なら、お前はなんだ?」
「ふっ…そりゃあ姉さん、このマイル様の冴えわたる頭脳こそが…」
「誰が弱点を言えと言ったんだ?」
あるえぇぇぇぇ?
「お前の武器は、ひとことで言うなら“野生”だ」
「野生…?」
「そうだ。お前の武器は野性的な鋭い“感覚”と“勘”だ。型に捉われない動きと、闘争本能剝き出しの格闘センスは正しく“野生の獣”だ」
「お…おう?」
褒められてる…のか?これは…
「だが今のお前の野生だけでは、これから先の上のステージじゃ生き残っていけない」
なるほどね…つまりオレはこの修行で“野生”以外の強みを手に入れろってことね?
「…かと言って、ナギのような器用さの無いお前に新しい“武器”を手に入れろといっても多分無理。というか絶対無理」
「うんうんナルホド…え?」
あるええぇぇぇぇええ!?
じゃあどうしたらいいのよ!?何!?オレまさかの戦力外通告!?
「お前に新しい事をやれとは言わない。だから…」
「…だから?」
「これからお前の“野生”をとことん磨く」
「!!」
「テメェの中途半端な野生を、生態系の頂点取れるくらいの“超野生”に仕上げてやるって言ってんだよ…こっからは弱音を吐く暇は無いからね?」
「う、ウスッ!!」
カルラの姉さんが鋭い目つきでオレを見下ろす。…うーむ、やっぱりカルラの姉さん、目つきが悪くなければ凄い美人お姉さんなのになー。
「でも野生を磨くって…具体的にどうすれば?」
「こうすんだよ」
「へ?……」
オレの体が、浮いた。
…いや、カルラの姉さんに蹴られた。
崖の上から蹴飛ばされたんだ!
そう気付いた時にはもう遅い。オレの体は急激に降下しはじめ、あの嫌な浮遊感が襲い掛かってきた。
「ちょおおおおぉぉお!?カルラさああぁぁぁん!!?」
「野生を鍛えるには…更なる“野生”の中に放り込む!」
カルラの姉さんが崖上からニヤニヤしながら覗き込んでいる。
「先ずはこのジャングルの中深部に向かいな!そこで合流するよ!間違っても…死ぬんじゃないよ?」
「いや今まさに死にそうですけどおおぉぉぉおお!?」
視界のジャングルがぐんぐんと迫ってくる!
♦
拝啓
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
私は修行に出た初日…いきなり殺されそうです。
あ、因みにこれは後日、ナギから教えてもらったんですが…
フレンジーっていう英単語は、フレンドリー的な意味ではなく…
逆上、乱心、狂乱…等という意味らしいです(笑)
つまり私がカルラの姉さんに叩き落されたジャングル…“フレンジーテーブル”とは、“狂乱の食卓”とかいう意味になるそうで…はっはっは(笑)
いや笑えねえええええええええええええええええ
byマイル
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