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重たい地響きの様な音を響かせながら、石造りの遺跡の入り口が開く。その先に延びる通路。…最初に来た時は第一層までしか進めなかったが、このダンジョンはまだ下へと続く階段があったのを確認している。今の俺ならどこまで進めるだろうか…。
「この先にダンジョンが続いています。魔物も昆虫系のものが結構な数出現しますよ」
「うむ、修行の場所としては文句なしだな…始めるか、ボウズ」
「はい!」
俺とバトスさんはダンジョンの中へと足を踏み入れる。俺は警戒心を強めつつ、淡く光る長い通路を進む。
「さてボウズ。お前さんはこのダンジョンの第一層は踏破したんだったな?」
「はい、あの時はノノとマイルも一緒でしたけど」
「よし、俺は手を出さん…先ずはこの第一層をお前さん一人で攻略して見せろ」
「!……わかりました!」
俺は黒羽の剣を抜き放つ。このダンジョンの第一層のマップデータは入手済み…まずは最短距離で第二層を目指す!
「…行きます!」
「おう、お手並み拝見だ…ボウズ」
俺は視界に捉えた敵に向かって駆け出す。開けた空間…そこを徘徊する二体の魔物。赤い体表に、大きな二つの鎌…レベル19のブラッドマンティスが二体…。初めてコイツと戦った時は、ギリギリの綱渡りみたいな戦闘だったが…今の俺なら…
『敵の解析完了。氷属性への耐性が低いようです』
了解だ、アド。
頭に響くアドの声を聞きながら一気に距離を詰めていく。敵もこちらに気付き、鎌を大きく振り上げ威嚇してくる。行くぞ!
「っ!…【
俺は地を蹴り、大きく跳躍。そのまま空中でスキルを発動。黒羽の剣の刀身が赤い光を帯びる。眼前へと迫ってきた俺に、ブラッドマンティスが鎌を振り下ろす!
【
俺はその一撃を高速の剣技で払いのける。攻撃を弾かれたブラッドマンティスは大きくよろめく。隙…アリ!!
「【
“上級剣士”の新しいスキル…【
瞬く間に放たれる、閃光の如き七連撃!!
「キシャアァァ…‼」
連撃を受けた敵は光の粒子となって霧散。だがもう一体のブラッドマンティスが俺の着地際を狙って鎌を振り下ろしてきた。さて…お披露目だ!
「【
俺は“
そしてこの【影渡】のスキルは、自身の近くにいる敵の背後へと瞬時に移動する!
「キシッ…!?」
ブラッドマンティスは俺の姿を見失い、困惑している。おぉ、便利だなこのスキル。
「【
敵の背後へと回り込んだ俺は、空中で“上級魔導士”へと変化。…次はコレだ!
「【フロストツイッグ】!」
突き出した掌から樹木の様に枝分かれしながら氷の
水晶のように透き通った氷の
「キシシシャアァ!!」
氷の棘に至る所を貫かれ、自由を奪われるブラッドマンティス。…うん、このスキルもかなり使えるな。
「【
身動きの取れない敵の前方へ悠々と躍り出て、“
「…【
放たれた矢はブラッドマンティスの眉間を打ち抜き…
HPを失ったブラッドマンティスは光となって消滅した。
『被ダメージ0…お見事です、マスター』
「…ふー」
よし…クルド村での大規模な戦闘で、俺のレベルは40にまで上がっている。以前と比べれば魔石も扱えるスキルも格段に増え、着実に強くなっている。このダンジョンの第一層に出現する魔物の情報は頭に入っている…このまま一気に第二層まで…
「なるほど…随分とお利口な戦いをするじゃないか、ボウズ」
「え…っと、ありがとう…ございます?」
バトスさんが顎に手をあて、何か考えるような素振りで声をかけてくる。今の戦闘は俺自身…かなり良い手筈だったと思うんけど…
「…だがそれだけじゃあ足りないぞ、ボウズ」
「!…」
「スタイルを切り替えながら、多種多様なスキルを適切なタイミングで行使する……なるほど確かにいいセンスだ。だがなボウズ…それだけじゃあもっと上の相手には通用しない」
通用…しない…?
敵のスキルや行動パターンを把握し、的確なスキル選択で戦闘の主導権を握るのが【不限の器】の…ひいては、俺の戦闘スタイル。それが…通用しない、というのは…?
確かに、今はまだバトスさんやシェンフールのシンといった強者と張り合えるような実力じゃないのは分かっている。でも…もっとレベルを上げて、魔石やスキルも集めることが出来れば…
「あー…多分、勘違いしてるなお前さん」
「え?…」
考え込む俺の様子を見てバトスさんが俺の思考を遮る。
「ボウズ…このダンジョンの第一層を抜けるのは問題なさそうか?」
「…はい。正直そんなに苦労はしないかと…第二層以降はまだ入ったことがないので何とも言えないですけど」
「ふむ…」
バトスさんは少し考える素振りを見せ…
「よし…剣を抜け、ボウズ」
「え?剣…ですか?」
俺は
「よし…ではボウズ……この先、一切のスキルの使用を禁止する」
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