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「バトスさんが…俺の修行を!?」
「ハリスとはもう随分長い付き合いでな。俺もお前に興味が湧いたので引き受けさせて貰った…不満か?」
「…いえ、有難い限りです!」
バトス=ローガン…サイクロプスを軽く屠って見せたあの実力。この人に指導して貰えるなんて、こちらから願い出たいくらいだ。
「では、決まりじゃの」
ハリスさんが“ポンっ”と手を打つ。今後を考えれば俺達全員のレベルアップは必須。俺達にはそれぞれこれ以上はないくらいの指導者が付いてくれた。後は結果を出すのみだ。
「よし、早速じゃがそれぞれ修行に入れ!…ナギ、今後の動きは?」
「はい!とりあえず四日後に俺達は一度、“
「ブランクタイム…時々
「はい、その間は俺達は一切の身動きが取れません」
俺達プレイヤーがログアウトして、次回ニューワールドへログインするまでの間に、この世界の時間は5時間程進むという。その間は無防備になってしまうし、マイルやノノとも定期的には合流して話し合う時間が欲しい。
「ならば…まずは3日間。3日後に一度全員此処に集合するというのでどうじゃ?」
「はい、それでお願いします」
「よし…では行け!」
「「「はい!」」」
俺達は顔を見合わせる。まずは3日間…マイル達が驚くほどの成果を出してやる。
「んじゃ、行くよ!クソガキ!」
「え?…カルラの
カルラがマイルに向かって声を掛ける。うん、なんかこの二人は丁度いいコンビな気がする…なんとなくだけど。
「黙ってついてきな!走るよ!ついて来れなかったら死ぬまで走らせるからね‼」
「え、ちょっ…姉さん!?」
勢いよくドアから飛び出していくカルラ。慌ててその後を追うマイル。あはは、早速振り回されてる。
「走るって…ほんと脳みそまで筋肉だなー、バカルラは。僕らは転移魔法で移動するよ」
「…わかった」
今度はフィルが口を開く。フィルとノノのコンビ…こっちは正直どうなるのか分からないな。
「あのねぇ…一応僕が“師匠”って立場になるんだからね!歳だって君よりずっと上なんだから、敬語くらい使ってよ」
「……わかった」
「いや、だから…」
「わかった…」
「あ、もういいです…さっさと行くよ」
フィルとノノの足元に魔法陣が出現し、光を放つ。次の瞬間には二人の姿は消えていた。…大丈夫かな、あの二人。
「さて…我々も行くとするか、ボウズ」
「はい…!宜しくお願いします、バトスさん」
「行ってこい、ナギ。…ルルアの事はワシ等に任せておけ。じきに目を覚ますじゃろうて」
「はい!行ってきます!」
俺はバトスさんと共に歩き出す。
…強くなろう。今度は負けないように…次はちゃんと守れるように!
♦
「さてボウズ…修行の場所なんだが、どこかダンジョンにでも入ろうかと思うんだが…」
センターギルドを後にした俺とバトスさんは、平原を進んでいた。ちらほらと視界に入る冒険者達がもの珍しそうな視線を向けてくる。…謎多き“
「出来れば他の冒険者が少ない方がいい…」
他の冒険者に出くわすことがなく、ある程度魔物が出現する場所がいいってことか…うーん……
「…あ」
「どうした?」
「俺、丁度良い場所…知ってるかもしれません」
「ほう…」
♦
クランツ王国の王都クランツ。その街の周囲に広がる広大な平原。その一角に、点々と大きな“穴”が開いている場所がある。
「ん、こりゃあギガントワームの巣穴…此処がお前さんが言っていた場所か?ボウズ」
「はい…正確には、“この穴の中”ですが」
「中…?」
そう、此処は俺達が初めてニューワールドに来た初日…
俺達は此処でギガントワームに遭遇し、マヌケなことにもこの巣穴に落下。そしてアレを見つけたわけだが…
「…ここを、降りるのか?」
「ええ、まあ…はい」
「確かに好き好んで気色の悪い巨大芋虫の巣穴に入ろうなんて奴はいないだろうから
「あ、ははー…」
いや、別に俺達も好き好んで入った訳ではないのだけれども…。
「この穴…かなり深そうだが」
「あぁ、大丈夫です。【
俺は上級神官へとスタイルチェンジ。
「ほう…便利な」
「ついてきてください!」
俺は目の前のぽっかりと口を開けた大穴に飛び込む。続いてバトスさんも降下してくる。すぐに視界が暗闇に覆われ、何も見えなくなる。だが数秒の後、青白い光を視界が捉える。…今だ!
「【
上級神官のスキルを発動。急降下する身体がふわりと浮き上がる感覚を覚え、俺とバトスさんの落下スピードが緩やかに…。このスキルは一応飛行能力系のスキルだが、移動速度はかなり鈍重な上に、高く飛ぶことは出来ない。大道芸レベルというか、戦闘ではまず使えないと思っていたが…こんな風に落下ダメージを防ぐのには役に立つな。
「ほう…これはまた……!」
ゆっくりと降下しながらバトスさんが目を丸くする。ドーム状に開けた地下の紘大な空間。青白く光る岩肌が照らし出す遺跡。
「これは驚いた…!まさかこんな所に未発見のダンジョンがあったとは」
俺とバトスさんは緩やかに着地した。
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