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「ならば…契約は成立じゃな」
「はい。悪い条件ではないですから」
俺はハリスさんが差し出した羊皮紙に指印を押す。ハリスさんが急に俺達を鍛えると言ったときは驚いたが……要するに、
「さて、そうと決まればお前さん達よ。そろそろギルド名を決めねばのぉ?」
「あ、そう言えばそうですね…」
「あー…オレ達のギルドって今、背番号?…みたいなので登録されてるんだっけ?」
「……ユニフォームじゃねぇんだから」
「アホの…エースで四番は…マイルのもの…」
「え?エースで四番!?オレ、カッコよ!!」
…うん。そうなんだよなー、ギルドを設立したときは、急なことで考えてなくて…。俺達のギルド名は現状“5182”という番号になっている。
「仮にもセンターギルド、クランツ支部の指名ギルドじゃからの…。“指名ギルド5182〈仮〉”では格好がつかん」
「エースで四番はカッコいいよ?」
「マイル…黙って…」
「そうですね…うーん…」
ノノとマイルに目を向けると、二人とも『任せる』というような表情。
「じゃあ……WBFで…どうでしょう?」
「「…WBF?」」
♦
とある場所
「…イベント実装準備、完了致しました!」
暗がりに複数のモニターだけが光を放つ空間。
「よし…始めろ」
「はい…!クランツ王国滞在中のプレイヤーに“イベント招待メッセージ”を送信します」
「さて…いよいよだな、冴木」
「ええ…今回は楽しみですよ」
「ふん…お前の一押し、期待の新人か」
「そうですね。今回のイベントが、良い結果を産んでくれることを祈りますよ」
♦
王都クランツ センターギルド
今回のプレイ時間は残り4日となった。俺達はハリスさんに『ここで待て』と言われ、センターギルトの酒場のフロアで待機している。
「それにしても、“WBF”か…なかなか気に入ったぜ、ナギ!」
「うん…悪くない」
「そうか、それなら良かったよ」
丸テーブルを囲み、ドリンクを片手にハリスさん達を待つ俺達。どうやら俺達のギルドネーム…ギルドの“活動指標”からネーミングしたものだが、二人もそれなりに気に入ってくれたようだ。
「まぁ、最初聞いたときはなんじゃそりゃって思ったけどな…おっ?」
不意に頭に電子音が響き、メッセージの着信を知らせる。俺達はツールボックスを開き、メッセージを確認する。それはニューワールドの運営から送信されたものだった。
―――――――――――――――――――――――
イベントへのご招待
クランツ王国滞在中のプレイヤーの皆様へ
イベント開催のお知らせ。
今回プレイ時間終了後、イベントを開催いたします。
イベント内容詳細に関してはイベント開始時まで
公開できませんが、イベントの結果に応じて
様々な特典が得られます。
イベント参加によるデメリットはありません。
レアアイテムを入手できるチャンス!
奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。
イベントにエントリーしますか? Yes / No
エントリー受付期間 : 2日
――――――――――――――――――――――――
「イベントへの招待!?」
「なにこれオモシロそーじゃん!」
どうやら周りにいる他のプレイヤー達にも送信されているようで、フロアの中に小さなざわめきが起こる。その時、再び『ピコン』という電子音と共にメッセージが届いた。差出人は…アリシアさん!?
――――――――――――――――
件名:イベント!!!!
参加しなよ!!!
――――――――――――――――
おぉ…なんとも簡潔なメッセージ。アリシアさんらしいな。
まぁアリシアさんのこの感じと、周りの様子からどうやらニューワールドでイベントが開催されるのは初めてのことではないようだ。結果によってはレアなアイテムも入手できるとのことだし、この世界の事を知る為にも今回のイベント…
「どうする?…ナギ…」
「そりゃあもちろん…!!」
「参加するか!」
「よっしゃあ!そうこなくっちゃ!」
俺達はその場でイベントにエントリーした。直ぐに『受付完了』の通知が届いた。
「待たせたのぉ」
「「!!」」
ハリスさん、フィル、カルラが俺達のテーブルに近づいてくる。
「待ってましたぁ!修行って何するんだ!?ハリスのじいちゃん!」
「それについてじゃが…三人とも別々に修行を積んでもらう。まずマイル、お前さんはカルラにみてもらう。カルラの指示に従って動いてもらうぞ」
「死ぬまでしごいてやるから、気合入れなよ」
「お…おぉう!?…」
凶悪な笑みを浮かべるカルラにたじろぐマイル。なるほど…修業は
「次にノノ…お主にはフィルがつく!」
「はぁ~…よろしくー」
「…がんばる」
何とも言えない空気で視線を交える二人。…なんか、不思議なコンビだな。
「……!…ってことは、俺にはハリスさんが修行を付けてくれるんですか?」
「いや…スマンがワシは別件でな。お前さんは、別の者に頼んである」
「え…別の者?…それじゃあ誰が…」
「君のお相手は俺だ…ボウズ」
「!!」
不意に感じた背後の気配に振り替えると、“その男”は立っていた。
その男は、灰色のぼろぼろのローブに身を包む通称“
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