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センターギルド本部 “ニュートラル”
薄ぼんやりとした控えめの調光に照らされた室内。だだっ広い部屋の中央には、これまた大きな長テーブル。大理石のような光沢と、良質な木材の落ち着いた雰囲気を併せ持つそのテーブルの両脇には向かい合うように、座りごごちの良さそうなレザーチェアが5脚ずつ並んでいる。そして上座には一際高級感を放つアンティークなアームチェアが1脚。
そこに腰掛ける面々を見て、僕、フィル=ファインズは小さく溜息を吐いた。
あー、最悪だ…いや、まぁ待機命令無視した時点でこうなるとは思ってたけどね?…それにしたって今回はバツが悪い。
「………」
現在テーブルについている面子は7人。その全員がセンターギルドの“
「…ふんっ」
わー…なんでそんな堂々としてられんのこのじじい。アナタが悪いんですよー?…ふてぶてしいにも程がある…妖怪ふてぶてジジイ。
「やあ、皆待たせてすまない。集まってくれてありがとう…若干数名、来てないみたいだけど」
どこからともなく現れた男。その男は静かで温和な声でそう言いながら、上座の椅子に腰を下ろした。センターギルドの
「さて、早速始めよう。皆、ハリスの報告には目を通してくれてるかな?」
アドルフ様が口火を切った。あぁ…始まる…。内臓が沈み込むような不快感を僕が覚える中、その会議は始まりを迎えた。
「昨日、犯罪ギルド“シェンフール”の構成員のアジトらしき場所が発見された。これに対し、我々センターギルドは部隊を編成し奇襲を掛け、これを殲滅する策を講じた…」
「だけどハリスの先走りジジイが、我慢出来ずに飛び出しちまったと…ケケケ!もう若くねぇんだから無理すんなよジジイ」
アドルフ様の言葉を引き継ぐ様に話し出した男。この声は…序列6位、“
「口が過ぎるよ、ギド。まずはハリスの言い分を聴こうじゃないか」
ギドをなだめる様にアドルフ様が声を掛ける。部屋にいる全員の視線がハリスに集まる。
「…ワシは間違った事をしたとは思っておらん。事実、戦地となったクルド村は奴等に食い物にされ、壊滅的な被害を
「とは言え、そのクルド村はセンターギルドの契約非加盟でしょう?我々が援助する義務は無い」
冷ややかな声を放つのは《序列9位》。ハリスの発言に食ってかかる。
「ふん…金勘定でしか物事を考えられんとは、その不憫な脳みそで序列9位なら上出来じゃわい」
「なんだとっ!」
「まぁそれにしたってマスタークラスが三人も出張っておいて、敵の一人も捕縛出来ず、全員取り逃がすとはねー」
「しかもその三人の内一人はウチの最高戦力、“
「そろそろ引退考えた方が良いんじゃねーの?じーさん」
「ふんっ!まだキサマ程度の小僧なら軽く屠れるわい」
「あぁ!?…」
「皆さん、熱くなり過ぎですよ。アドルフ様の前です」
「単独で動くにしても、報告すべきだったでしょう」
「問題はシェンフールの今後の動向だろう!」
「でもぉ、私は~ハリスさんの考え、好きですよぉ?」
「ハハっ!ハリスじゃなくてオレが出てりゃー全員ボコしてやったのによ」
部屋のあちらこちらから声が飛び交う。うわー…センターギルド上層部の言い争い…怖~。センターギルドは世界中に支部が存在する超巨大組織。世界で約30万人のエージェントを雇用しており、その全員が優れた力を持っている。その中でも特に優れた、選ばれた一握りの人材に“マスター”の称号が与えられ、支部の管理や運営を行っている。
現在センターギルドのマスターと認められたエージェントは192人。その全員に序列という数字が与えられる。序列に関しては定期的に査定が入り、その者の実力や功績に応じて変動する。序列は単純な戦闘力だけで決まるわけではないが、基本的には序列が上であるほど非凡な実力者だと思ってもらっていい。
そして今この場で激しく言葉を投げ合っている人達こそ、1位から10位までの序列を与えられたセンターギルドの最高戦力…“
「…ねぇカルラ、これ僕達どうなんの?」
喧嘩腰の舌戦を交わすハリスと十本指を尻目に、隣にいたカルラにそっと声をかける。カルラはといえば、見るからに不機嫌な仏頂面をしている。
「ちっ…知らないよ、ガキの喧嘩みたいに騒ぎやがって。……おい!黙って聞いてりゃうだうだと!トゥハンズだか
わーお、急にどうしちゃったのこの子?ヤメテ、コワイ、キモイー。お願いだからこれ以上怒らせるんじゃないバカ、バカルラ!
突如、殺気とも取れる突き刺すような威圧感がこの空間を切り裂いた。一瞬にして喧騒はナリを潜め、室内に静寂が訪れる。
「皆、静かに…ね?」
…うん、やっぱこの人が一番恐ろしいや。
センターギルド頭目、“序列0位”アドルフ=デロゲート=フォンライツが静かに、その場を収めた。
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