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「へへ…やったな、ナギ」
「おう、お疲れ」
休んでいる暇ない。ノノの【
「行くぞマイル。ノノの…」
どおおおぉぉぉん―――
「「!!?」」
不意に響いた衝撃音。俺達のすぐ傍で土煙が上がっている。なんだ!?何か飛んできた!?
「うっ……!!」
それは、赤髪に黒のレザーメイル…カルラだった。仰向けに倒れ、苦痛の表情を浮かべている。
「カルラ!?」
フィルが声を上げる。カルラは体を起こし、血の混じった唾を吐き捨てる。
「とんでもないね……噂以上のバケモンだ」
カルラの視線の先。ゆっくりと歩み寄ってくるシンの姿。白銀のオーラを纏い、突き刺すような
「なかなか楽しめたぞ…赤槍」
「おいカルラ!!?お前が負けてどうするんだよ!」
「うるっさいね!…わかってるよ!」
カルラはフィルに反発しつつ槍を構えるが、明らかなダメージが見て取れる。マズイ!!
「……何の真似だ、小僧?」
「………」
考えるより先に、シンの前に立ちふさがった俺。
「アンタ…やめな!アンタに敵う相手じゃない!!」
背中からカルラの声。…いや、ほんとその通りなんだよな。
「………」
「っ…」
凄まじい威圧感。身体が強張る……勝てる気がしない…。
「まぁいい。俺が手を下すまでもなさそうだ」
「?…」
「おいナギ!何か変だ!!」
マイルが叫ぶ。そちらに目をやるとキメラグールの亡骸を見つめるマイルが……亡骸?
「消滅…してない?」
「ホホホホ…“ボムヘッド”という希少な魔物は、死に瀕すると自爆するという性質を持っています」
「!?…」
地面から姿を現し、ニタニタと話すセーミス。何を言って…まさか!!
キメラグールの亡骸に目を戻すと、その身体が大きく膨れ上がっていく!
「マイル!!」
「まぁ私の実験体はその何十倍も爆発の威力が高められていますがね。それこそこの村ごと吹き飛ばす程にはね…ホホホ!」
冗談じゃない!何か手は!?
そうこうしている内に、膨れ上がったキメラグールの身体が赤熱し、発光する!
「では、私達は失礼させていただきましょう…【
シンとセーミスの足元に魔法陣が出現し、二人は光に包まれていく。キメラグールの放つ光が一際強さを増す!
「ナギ!これっヤバ…」
「く…そ……」
刺すような閃光に目が眩む!そして……
静寂。
「……え?」
目の前にあったはずの、キメラグールの亡骸が跡形もなく消え失せている。だが…
「あれ?…爆発…するんじゃないの?」
肩透かしをくらったマイルが小首を傾げる。だが、困惑しているのは俺達だけではなかった。
「こ…これは…?」
魔法で逃げたかに思えたシンとセーミスの姿がまだそこにはあった。何がどうなって…
「そうですか…アナタの仕業ですか。私の転移魔法の妨害まで…ホホホ、流石は“無色”の…」
「ギリギリ…間に合ったのぉ。逃がしはせんよ、悪ガキ共…」
「「!!」」
低くしわがれた声。
「あ゛あぁぁぁ…死ぬかと思った」
「ふん、情けない。まだ仕事は残っとるぞ」
「はいはぁい!わかってるって!!」
「マイネ、ルルアと村人達を頼むぞ…」
「はい!」
「手酷くやられたのぉ、カルラ」
「ちっ…うっさいよ…」
シンと対峙するフィルとハリスさん。マイネさんの腕の中では、元の姿を取り戻したルルアが…
「マイネさん!…ルルアたんは…!?」
「今は気を失っていますが、大丈夫ですよ」
「っ…良かった……」
マイネに駆け寄るノノ。マイネの言葉を聞き、胸を撫で下ろす。
「よくやった…3人とも」
ハリスさんが静かな笑みを浮かべ、言う。
ハリスさんが俺の前に出る。小柄なハリスさんの背中がとても頼もしく思える。
「は…はは。なんとか、なったなナギ」
マイルが気が抜けたように腰を下ろす。安堵と共に押し寄せてくる疲労感。
「ナギ、お主も下がっておれ…ここからはワシらの仕事じゃ」
「……はい!」
「フィル、カルラ!…アンデットとあの
「へいへい」
「はーいはい」
フィルとカルラは気の無い返事をしつつも、戦闘態勢に入る。
「俺達も手伝います!ノノはマイネさんと村の人達のところへ!」
「うん!…」
「ではノノさん、行きましょう!」
「じゃ、アタシが道を開けよう」
カルラが先導し、村人達が籠城する家屋へと駆けていく、ノノとマイネさん。
俺、フィル、マイルは周囲のアンデットに気を配る。
「君達元気だねぇ…ま、手伝う程も無いかもしれないよ?」
「え?」
そう言って左手の人差し指と中指に、それぞれ小さな青い石がはめ込まれた指輪をつけるフィル。
「…一瞬で終わっちゃうから!」
フィルの身体が宙に浮き、頭上高く昇って行く。フィルが手を掲げる…
「【
「!!」
上空に強い光を放つ光球が出現!
目が眩むほどの閃光を散らすその光球は、さながら小さな太陽…
「「ア゛アアァァァ…」」
光を浴びたアンデット達が灰となって消えていく!!
光球が消滅する頃には、そこら中に蔓延っていたアンデットの殆どが灰となって消え失せていた。
「…マジかよ」
「ちゃんと強いんだな…あのちびっ子」
一瞬のことで、俺とマイルは呆然。これがセンターギルド、マスターの実力…。
「ふー…アンデットなんて死にぞこないは、聖魔法で蹴散らすのが一番」
地に降り立ち、少年のような顔立ちで凶悪な笑みを浮かべるフィル。フィルが光の無い目で自身の手を見つめると、指輪の一つが砕け散った。
「はぁ~あ…」
そして深い溜息をひとつ。なんか怖いんだけど、この人…。
「…流石に分が悪い。退くぞ、セーミス」
「そのようですね…」
殲滅されたアンデットを見て、踵を返すシンとセーミス。
「逃がさぬと言うたじゃろ…」
その二人の前に、ハリス=ウースラッドが躍り出た。
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