154
「おらっ!!」
マイルが速攻!
大剣を振り下ろす!
強烈な金属の衝突音。謎の巨大グールは盾でマイルの一撃を防ぎ、跳ね退ける。
「うわっとと!!」
勢いよく大剣を打ち払われ、体制を崩したマイルに敵のファルシオンが迫る。
「こんにゃろうがあぁぁ!!」
マイルは体を捻り、そのまま遠心力を乗せた大剣の横薙ぎで敵の剣を弾き返す。
「【フロストエッジ】!」
その隙を縫って俺はマイルの後方から魔法を放つ!
放たれた氷の刃が敵を切り裂く!
「グウゥゥゥ…」
クリーンヒットしたはずだが、敵のHPバーは殆ど削れていない。イマイチ、か…何か解ったかアド?
『解析の結果、対象は複数種の魔物の性質を持っているようです。グールの身体がベースにはなっているようですが、グリズリーやオーガ等の特性も見受けられます』
『はい。対象の身体の縫い後から考えても、人為的に造られた魔物である可能性が高いかと。現在の【解析】スキルのレベルでは詳細までは判別がつきませんが、6種類以上の魔物の性質を持っています。敵の特殊攻撃にも注意してください』
名前も無い魔物ってことで予想はしていたが、アドの【解析】でも“良くわからない”ってことか…
「マイル!敵の情報が少ない、物理攻撃以外も警戒しておけ!」
「おっ……けい!!」
マイルがキメラと打ち合いながら応える。マイルが単純な接近戦で苦戦している…敵の膂力も並じゃないな。それに問題はそれだけじゃない…
「【フレアボム】!」
俺はハリスさんに近づいていたスケルトンを火球で打ち抜く。他のアンデットからも注意を外せない。マイルに加勢してやりたいが、ハリスさん達を守りながらとなると…
「ぐわっ!!」
「マイル!」
マイルが跳ね飛ばされ、仰向けに倒れる。マイルはすぐさま立ち上がるが、肩で息をしている。
「はぁ…はぁ…くっそ…」
「大丈夫かマイル!?」
「おう!…はぁ…ナギ、こっちは…はぁ…俺が抑える。ハリスのおっちゃん達は頼むぜ!」
そう言って再び敵に向かっていくマイル。マイルがここまで急激に消耗するなんて…それ程敵の戦闘能力も高いってことだ。敵の能力の底が知れない以上、このままだと…。
「…【
「!!」
俺の背後で少女の声が、静かに響いた。
♦
少し時を遡り…
「…【
糸で動きを封じたスケルトン2体に、硬質化させたミハエルで打撃攻撃を放つノノ。2体のスケルトンが消滅。
「ウガアアアァァァ」
「!…【
後続で突撃してきたグールを、指から伸びる魔法の糸で切り裂く!
「は……はっ…」
村人達が身を潜めている家屋の入り口を守るノノ。だが絶え間なく押し寄せてくるアンデットとの戦闘に息が上がっている。
ノノのジョブである【
「ア゛アアァァァ」
「…っ!!」
ノノは【人形劇】を使わずに戦い続けていた。【人形劇】の効果時間は5分。その後はしばらく再使用できなくなってしまう。いざという時の為に温存しておかなければ、その時になって【人形劇】が使えなければ対応力は半減してしまう。
今は村人達が籠城するこの家屋の入り口を死守するのみ。そう思い、スキルを温存しての防衛戦に挑んでいるノノであったが…
「くっ…」
それは想像以上に苦しい戦いとなった。【
「…ふー……」
息を吐き、頬を伝う一筋の汗を拭い警戒を続けるノノ。その様子を獣人族達は窓から見つめていた…。
「…どうしてあの子はあそこまで必死に?」
「俺達獣人族は蔑まれることも多い、嫌われ者なのに…」
「
「馬鹿言うな!転移者にこの村の仲間が何人殺されたと思ってる!信用できるかよ…」
「でもよぉ…」
村人達は各々の想いや考えを口にする。窓の外、目の前では1人の誰とも知らぬ少女が、自分達の為に息を切らし、表情を歪めながらも必死にアンデット達と戦い続けている。
「私達は…このままでいいんでしょうか?」
「「「!?」」」
1人の女性が口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます