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「ウアアアァアァァアア!!」



ルルアが光の壁の中で咆哮を上げる。結界は軋み、揺らぐがルルアの動きを封じ続ける。



「ハリス!マズイって!アンデットが!!」


「わかっとる!集中せい!」



相も変わらず言い合いを続けつつ、結界を維持する三人。そこへスケルトンが忍び寄り、剣を振り上げる!



「ハリス!後ろ後ろ!!」


「………」


「【四重斬フラッシュフォース】!」



俺は躍り出て、スケルトンを剣で斬り付ける!



「ア゛アアァァァア」



俺の攻撃を受け、スケルトンは仰向けに倒れる。



「…助かったぞ、ナギ」


「俺達が守ります。こっちは気にせず、ルルアをお願いします!」


「うむ!」



俺は背中越しにハリスさんに言葉をかけ、周囲に気を配る。



「ねぇちょっとちょっと!こっちもお願いしたいんだけど!!」


「任せろよっと!!」



フィルに襲い掛かってきたグールをマイルが大剣で払い飛ばす。フィルは安堵の溜息を吐き、うんざりといった表情。



「グウウウゥゥ…」


「「!!」」



俺とマイルが斬り伏せたアンデットが起き上がる。…やっぱり物理耐久は高いな。



「「【炎剣】!!」」



俺とマイルはスキルを発動。俺も【鏡花水月】でマイルの【炎剣】をコピーして発動する。アンデットは次から次へと沸いてくる…敵は物量戦を仕掛けてきている。それなら単発の攻撃魔法より、一定時間効果を発揮する【炎剣】の方がMPの消費を抑えられるだろう。



「はぁっ!」

「おらあっ!」



俺とマイルは炎を宿した剣で敵を切り裂く。スケルトンとグールは消滅。



「ナギ…どうするよ?敵さんどんどん増えてるぞ」


「…マイル、“自由に暴れろドッグラン”だ…俺が合わせる!」


「!…へへ、久しぶりだなその作戦。りょーかいだ!!」



ルルアを相手取るハリスさん達を中心に、マイルが周囲を駆け回り敵を斬りつけていく!



「おりゃ!!…どらあ!!」


「…【瞬進斬】!」



マイルを抜けて接近してきた敵を俺が討ち倒す。



「アイツ…なんだよあの動き、剣士というより、まるで獣だ」



次々と敵を斬り伏せていくマイルを見て、フィルは目を丸くする。



「あんな無茶苦茶な動きに合わせてるあのナギってのも…大概だな。アンタが気に入るわけだね、ハリス」


「ふん、ワシもアヤツ等の戦いを直に見るのは初めてじゃよ。まだ粗削りじゃが、これからが楽しみな連中じゃのぉ」


「ちょっと!ハリスさんもフィルさんも集中してください!!」



マイネさんが声を荒げる。


俺は一体のグールを斬り付ける。剣の炎が燃え移り、グールは消滅。ここで【炎剣】の効果が切れる。



「ふぅ…【異能転化オーバーライト】」



上級魔導士にスタイルチェンジし、再びマイルに目を向ける。駆け、跳ね、回り、嬉々として剣を振るうマイル。…今のところ抑えられてはいるが、このままじゃ先にこっちの体力やMPが切れてしまうな。



「ホホホ…なかなかやりますねぇ」


「!!」


「ただのアンデット共では相手になりませんねぇ…では私の実験体に相手をさせましょう」



薄ら笑いを浮かべたセーミスが姿を現し、片手を振り上げた。






シンの頭上から降り注いだ紅い斬撃。無慈悲とも言える程の猛攻を終え、着地するカルラ。



「………なっ!?」


「凄まじい攻撃だな…今のは少し、焦ったぞ赤槍」



土煙の中からシンが姿を現す。その身体はカルラと同様、白銀のオーラを纏っており…



「マジかい……まさかアンタもを使えるとはね」


「…さて、反撃といこうか」


「!!」



シンがカルラに急接近!

それは先程までとは別次元の速度に…



「くっ!!」



カルラはシンの短剣を槍の柄で防ぐが、あまりの勢いに表情が歪む。



「コレは本格的に、ヤバいかもねぇ…」







「テメエ!そこを動くな!マイル様がぶっ飛ばしてやる!」


「ホホホ!申し訳ないがアナタ方の相手はコイツの仕事です」


「!?」



セーミスが腕を振り上げると、地面に魔法陣が出現。その魔法陣から光と共に姿を現したのは…



「な…んだ、コイツは?」



見た目はグールに近いが、以前倒したオーガのような巨体。縫い痕だらけの肉体に大きな盾と幅広の刀剣ファルシオン。



「グウ゛ウゥゥゥ…」



――――――――――――――

  ?????  Lv50

――――――――――――――



名前すら見えない魔物!?…アド!



『はい。解析を開始します』


「マイル…安全第一、とは言ってられない状況だ」


「おうよ…遅れをとるなよ!ナギ!」



俺とマイルは謎の魔物に向けて駆け出した。

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