思惑<ウズマク>

152


「突っ込めマイル!援護する!」


「りょーかいっ!!」



マイルが先行して駆けていく。俺は後方から魔導士にスタイルチェンジし、狙いを定める。



「【炎魔独行えんまどっこう】!!」



マイルが炎を巻き上げながら門に群れるアンデット達へ突撃!

アンデット系のモンスターに通常の物理攻撃が効きにくいのは学習済みだ!



「ギャアアァァァ!!」

「ガアアアア!!」

「オ゛オオォォォォオオ!!」



腐乱した人型の魔物や、鎧に身を包んだ骸骨等、十数体の魔物が炎に包まれて吹き飛ぶ。



「グガアアァァァ!」



攻撃の反動で動けないマイルにグールの群れが襲い掛かる!



「【サンダーフォール】」



雷撃が降り注ぎ、マイルを狙うグール達を直撃!

グールは奇声を発しながらバタバタと倒れていく。



「門を閉めろ!」


「おうよ!」



マイルが両開きの門を閉じ、かんぬきを掛ける。



「【フロストエッジ】!【フレアボム】!」



俺は既に村の中へ侵入していた数体のモンスターを掃討。

門は閉じられ、モンスター達の侵入を防ぐ。とはいえ…木造の分厚い扉だが、かなり年季が入っているように見える。この門がいつまで持つか…



「…戻るぞ、マイル」


「え!?」


「このモンスター達をわざわざ村の外を取り囲むように呼び出したのは、村から逃げ出す者がいないよう包囲するためだ。恐らく本命が…」

「察しがよろしいですなぁ」


「「!!」」



不意に地面から姿を現したセーミス。ローブの奥の顔はニタニタと笑みを張り付けている。



「アナタのお考えの通り…村の中にも召喚いたしますよぉぉぉ!」


「その前に…」


「「お前を叩く!!」」


「おっとぉ!!」



俺とマイルが同時にセーミスに攻撃を仕掛けるが、セーミスは再び地面の中へと姿を眩ませてしまう。そして、代わりに…



「ア゛アアァァァア」

「ウグゥゥゥゥ…」



村のあちらこちらから呻き声と共にアンデットが地面から這い出てくる!



「くっそ!!」


「戻るぞマイル!ハリスさん達の護衛に廻ろう!」


「わかった!!」



俺達はルルアを結界で抑えているハリスさん達の元へと駆け出した。





「ウア゛アァァァァ…」



呻き声を上げ、地面から出てくるアンデット達。



「ちっ……気持ちわりぃのが出てきたね」



カルラは横目でスケルトンの姿を確認しつつ、舌打ち。



「余所見をしている暇があるのか?」


「っ!!」



側面から急接近し、短剣で斬りつけてきたシンの一撃を槍でいなすカルラ。そのまま反撃の鋭い突きを放つが、身を捻りそれを躱すシン。一進一退、二人の実力は拮抗していた。



「マズイねぇ…ハリスもフィルも動けないってのに…」


「ガアアアァァ!!」

「ギギギギギ!!」


「!!」



複数体のアンデットが一斉にカルラに襲い掛かる!



「邪魔だよ!…」



迎え撃つべく、構えを取るカルラ。



「【連投速刃ラッシュナイフ】」


「っ!!」



そこへ、高く跳躍したシンが数十本にも及ぶナイフをカルラに投げつける!

周囲からアンデットの群れ、上空からは大量の刃が迫りくる!



「ナメんじゃ…ないよ!」



カルラは槍を掲げ、振るう!



「【百紅ハンドレッド】!!!」



その槍の動きは目で追える速度を超えていた。

次の瞬間、カルラから縦横無尽に放たれる無数の赤い斬撃!

その光景はまるで、咲き乱れる紅い華…



「「ギィャアァァァアア!!」」



深紅の斬撃は、周囲のアンデット達を切り刻み、シンが放った全ての刃を叩き落とした!



「これは…噂以上だな、赤槍」


「時間が無いからねぇ…そろそろ大人しくしてもらうよ!」


「!!」



カルラの身体を白銀のオーラが包み込む。警戒したシンは後方へ大きく跳躍。



「【閃紅せんこう】!」


「っ!?」



一瞬で間合いを詰め、シンに斬りかかるカルラ!

シンは槍を短剣で受け止めるが、そのまま地面に叩き落とされる!


衝撃音と砂煙が舞う。ここで初めて、シンのHPが減少。シンは態勢を立て直し、追撃に備える。



「終わりだよ…」



高く跳躍したカルラ…



「!!!」



紅い斬撃の雨が、シンに降り注いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る