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「ハリス…さん!?マイネさん!?どうして此処に!?」


「間に合って良かった!私達は…」


「説明は後じゃ。まずはこの状況を…」



ハリスさんが言いかけたところで、地面に魔方陣が浮かび上がる。その魔方陣は強い光を放ち…



「はーっ!とんでもないのが居るじゃないか!お尋ね者のシン!こりゃあハリスのジジイに乗せられて正解だったかな!」


「冗談じゃないよ…本部の待機命令無視して、マスター3人が出張るなんて……後で始末書じゃ済まないでしょ、コレ」



魔方陣の中から突如姿を現した二人。スラリと背の高い、赤味を帯びた髪の女性と、輝くような金髪に尖った耳の少年。



「あ!…センターギルドの!!」



俺達がクルド村に来るまでに出会った…。ローユの街センターギルドマスターの男勝りな女性、カルラ=リグショット…そしてリシングの街のマスターを務めるエルフ族、フィル=ファインズの二人であった。



「それにしても、何コイツ?…とんでもない“重魔力じゅうまりょく”だけど」



金髪のエルフ族フィルが、今や黒い悪魔と化したルルアを見て顔をしかめる。



「ナギ、状況を説明せい…なるべく簡潔にな」


「あ…っと、“シェンフール”という謎の組織と戦闘中です。敵の総戦力は不明、ですが他にも仲間がいると考えて間違いないかと…それから……ルルアが黒い影の様な物に覆われて…自我を失っているようで、どうすればいいか…」



ハリスさんに言われて、混乱した頭のまま何とか状況を伝える俺。ハリスさんは俺の話を聞くと、小さく頷き…



「…魔力の質が似ていると思ったが、やはり…ルルアか」



ハリスさんはルルアを真直ぐに視界に捉える。



「あのっ!…どうかルルアを!」


「わかっておる、安心せい…とはいえ、この男が相手となると…」



ハリスさんはルルアからシンへと視線を戻す。



「センターギルドのマスターが3人もお出ましとは…ザイ、退け。お前で太刀打ち出来る相手じゃない」


「でも!…」


「退け…と言ったんだ」


「!…はい」



シンがザイへと冷ややかな視線を送り、ザイはバツが悪そうに暗がりへと消えてゆく。



「……随分とあっさり見逃してくれるんだな。マスターハリス?」


「ふん…あんな小童1人、後からどうとでもなるわい。それより、お主は逃げぬのか?」


「…逃がしてくれるなら、な」


「そんな訳ないだろう!」


「!!」



一瞬でシンの背後へと回り、槍を振り下ろすカルラ=リグショット!

紅い刃の槍がシンを捉えたかに思えたが!…



「おっと…危ない危ない」


「あぁ!?」



シンの姿は消え、カルラの槍は空を切る!

シンはカルラの背後へと移動していた!



「ちっ……おいハリス!コイツはアタシによこしな!」



カルラはシンから一度距離を取りながら言う。


…速すぎる!いつ動いたのかも分からなかった。

あんな動きをするカルラも凄いが、アレを躱す方も躱す方だろ…


俺はカルラとシンのただの一撃のやり取りだけで、思い知る…次元が違う。



「…まぁ良い。じゃが分かっておるな?…アヤツはセンターギルドのマスターを1人、…気を抜くでないぞ」


「分かってるっての!!」



カルラが再びシンに接近!

槍を巧みに操り連撃を仕掛ける!



「…“赤槍あかやり”のカルラか。流石に素晴らしい速さだな」


「余裕ぶっこいてんじゃ…ないよ!!」



シンは腰に差していた湾曲した短剣を抜き放ち、カルラの攻撃を的確に捌いていく。

助太刀…は無理だな。付け入る隙がない。



「あのバカおん…カルラ1人に任せていいの?アイツ、相当強いでしょ?」



フィルがハリスに言う。



「ひとまずヤツはカルラに任せる…ワシ等はこっちをなんとかせねばな」



ハリスはルルアに向き直る。ルルアは苦しそうなうなり声を上げている。



「フィル、マイネ!…“三方結界”じゃ」


「は!?…そんな面倒な!僕がささっと片付けるよ」



フィルが両手に魔方陣を展開。



「ならん!!アレは罪のない獣人族の子供じゃ、傷つけず、暴走を止める」


「え?…獣人族?獣人族がこんな魔力を?…マジで?」


「つべこべ言っとる時間は無い!このままだとルルアの命に係わる!始めるぞ!」


「ちょ!…僕あんまり結界魔法は得意じゃないんだけど」


「ふん!エルフに苦手な魔法があるとは…“魔法に愛された種族”が聞いて呆れるわい」


「なっ!?」


「やれるのか?やれんのか?」


「やるよ!やってやるよ!……クソじじいめ」



ハリス、マイネ、フィルの三人がルルアを取り囲む。三人がそれぞれ地に両手を着き唱える…



「「「【三方結界トライケード】」」」



三人を結ぶように光の線が走り、そこから光の壁が出現。ルルアは三角錐の光の壁に閉じ込められた!


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