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掻き消えゆく炎と土煙の中からゴルトが姿を現す。



「フーッ……フーッ!!!」


「『っ!!!」』



土煙を巻き上げながらゴルトが猛進!


さっきより速い!俺が撃ち込んだ【楔撃ちピックショット】の効果が切れたか!



「『【異能転化オーバーライト】…」』



ダメだ!間に合わな…



「【爆砕滅打ハードブレイク】」


「『!!!」』



ゴルトが斧を振り下ろす!!

アドは何とか斧を回避するが…


凄まじい衝撃音…振り下ろされた斧は地を砕き、その一撃の余波が強烈な衝撃波となって周囲を襲う!



「『っ!!!」』



俺の身体は吹き飛ばされ、近くにあった家と小屋が倒壊!




「…おいおい、村ごと壊す気かゴルト?」



未だ見物を続けるザイが、ため息混じりに声を掛ける。


俺のHPは半分以上削られた…なんて威力だ。


『申し訳ございません、マスター…敵の排除に失敗しました』



充分だ、気にするな。交代だ、アド…



『…はい。“自動操縦オートドライブ”を解除します』



俺に体の感覚が戻ってくる。体を起こし、上級神官にスタイルチェンジ。



『申し訳ございません…今の攻撃に巻き込まれ、クルド村の建造物2棟が倒壊、6名の住人が負傷しました』



そうか…分かった、後は任せろ。



「フーッ…」


「【ヒール】」



俺は魔法でHPを回復。…アイツは危険すぎる、急がないと村に被害が出てしまう。



「【リフレクトヴェール】」



防御力を上昇させるスキルを発動し、上級剣士へとスタイルチェンジ。剣を構える…



「来いよ…接近戦は得意だろ?」


「…ガアアァァ!!」



ゴルトが接近!力任せに斧を振り回し攻撃してくる!!



「ウッ!!?」



俺はその連撃をことごとく躱す!


もう大分出来たからな…スキル攻撃も見れた。後は細かな情報の補足と修正…


俺はゴルトの攻撃をいなしながら思考する。先程まで戦闘をアドに任せ、俺は“視る”ことに集中していた。お陰でゴルトの行動パターンをかなり分析できた。単純な近接戦闘なら、ゴルトの攻撃をほとんど見切れる。


問題は…スキルだ。アドが頑張ってくれて、ゴルトのスキルを引き出してくれたが、未だゴルトがスキルを使用したのはたった2回。まだ他にもスキルを持っているはず…“未知”には最大限の警戒をしなくては…。


でも…【管理者アドミニスタ】のお陰で、ソロで“DA”が可能になったのはデカい。まぁ、アドの“自動操縦オートドライブ”には色々と制限やリスクもあるんだけどな…



「さてと…そろそろ反撃させてもらうぞ。【剣撃強化ソード・レイズ】」


「ウゴアアァァア!!」



ゴルトの攻撃の合間を縫って斬りつけていく!

手数で押し切る!!



「【四重斬フラッシュフォース】!!」


「グウゥゥッ!!」



やっぱり、大したダメージ入らないな。だったら…【瞬進斬】!


ゴルトが怯んだタイミングで【瞬進斬】で敵頭上へ移動!

ゴルトは俺の姿を見失っている。



「【魔力充填マナチャージ】…」



そのまま上空で魔導士へスタイルチェンジし、スキルを発動。…これで次に放つ魔法の威力が上がる。



「【フレアボム】!!」



真下にいるゴルトに火球を放つ!

大きな爆発が起こり、ゴルトは爆炎に呑まれる!

俺は爆風を利用してゴルトから距離を取る。


まぁ、どうせまだピンピンしてるんだろうけど…この隙に



「マイル!!」


「おう!!」



俺とマイルはお互いに駆け寄り合流。よし、連携が取れれば戦略も広がる!



「苦労してんな!!ナギちゃん」


「お前こそ…最初やられっぱなしだっただろ?」


「たははー…いやー、なかなか攻撃当たらなくてさー。もうプラズマローション溜まりまくりで爆発しそうだったぜ!」


「………」



…は?プラズマローション?

え、何言ってんのこの人怖いんだけど。



「おいおい、頼むぜ二人ともー…ガキに舐められてんなよぉ」



ザイが屋根から跳び下りて、歩み寄ってくる。



「…やっと降りてきやがったか、見物マンめ」


「あぁ…お前等は危険だ。ここで徹底的に潰すことにした。…まぁ、相手は俺だけじゃないがな」


「「!!」」



物陰から数十人の男達が現れ、俺達を取り囲む!



「なっ!?汚ぇぞテメェ!!」


「…まだ仲間がいたのか」



俺とマイルは背中合わせになり、警戒する。この数は…流石に…



「ククク、汚い?…そもそもウチは“犯罪ギルド”なんでねぇ。まぁ、大人しく死んどけ」



ザイがニタニタと笑みを浮かべる。20人はいるだろう男達がじりじりと詰め寄ってくる。まずい!…何か…何か手は!!…




「出て行って…」


「「「?」」」



夜空に木霊するように、小さな声が響いた。





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