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俺の指先から一筋の閃光が走る!



「っ!!」



黒装束の男、ファニは攻撃を中断し、空中で身を捻る!

俺の放った魔法はファニの肩を掠めるだけとなった…が、ルルア達は逃がせたな。



「おいおい…おいおいおい!!なんだそりゃ、お前!?剣士が魔導士になりやがった!?」



ザイが目を見開いて声を荒げる。…この状況で隠してもいられないからな。



「……追うか?」


「ほっとけ、ここの村人連れてりゃ、どうせそう遠くまでは逃げられねぇ」



ファニの問いにザイが答える。



「それより…テメェはなんだ?ジョブを切り替える能力なんて聞いたことねぇぞ?」


「答える義理はないだろ?」


「それより、いつまで高い所から見下ろしてんだ?…降りて来いよ、オレ達が遊んでやるぞ?」



俺とマイルは警戒態勢。



「ナギ…いけるか?」


「…何とも言えない。互いに背中を守って様子見だな…」


「はいよ…しっかしナギはやっぱえげつないな。リリアさんの説得とかお見事だわ」


「軽口叩いてる場合かよ…」



小声で言葉を交わしつつ、俺は上級剣士にスタイルチェンジ。剣を構え、集中する。



「まぁそう怖い顔すんなよ。お前らの相手なら…」



ザイがそう言うと、建物の陰から10人程の男達が現れる。それを見た村人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。



「うわぁ…めんどくせぇ」


「おい…女が一人逃げた。村人を二人連れてる…仲間に連絡して探させろ」


「はい!」



ザイが男達に指示を出す。…まずいな、思ったより敵の組織が大きいようだ。早くノノ達と合流しないと…。



「高い所から悪いが、もう少し俺等は高みの見物させてもらうわ」



ザイの仲間だと思われる男達が笑みを浮かべて近づいてくる。男達のレベルは30前後…数は多いが…。



「ナメられてるなー、ナギ」


「だな…」


「いいぜ、かかって来いよ。さっさと雑魚蹴散らして、お前をそこから引き摺り下ろしてやるよ」


「おう…楽しみにしてるぜ、ガキ共」



薄ら笑いを浮かべるザイ。俺とマイルは同時に駆け出し、犯罪ギルド“シェンフール”との戦闘に入った。






その頃……



「あ…あの!!」


「…いいから走って……」



クルド村を出て、森へと入っていくノノ、ルルア、リリアの三人。夜の森は暗く、木々の隙間から漏れるわずかな月明かりを頼りに進んでいく。



「あ、あの方達は大丈夫なのですか!?」



前を走るノノを追いながら、リリアが尋ねる。



「……大丈夫…」



静かに、だが、自身に言い聞かせるようにノノは答える。ノノは手を引いているルルアに目を向ける。あの後から一切言葉を発さず、されるがままについてきたルルア。顔を伏せ、その表情は伺えない。



「ルルアたん…」



ノノは周囲に敵の気配がないことを確認し、立ち止まる。



「…ルルア、聞いて?」


「………」



リリアが声を掛けるが、ルルアは反応を示さない。



「ルルア…」


「教えて…リリアさん。クルド村に…何があったの?…」


「………」


リリアは表情を強張らせ、ゆっくりと話し出した。





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