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アド…この酒、解析できるか?
俺は村長の置いていった果実酒の瓶を見つめながら、アドに指示を出す。
『【鑑定】スキルによってアイテムの解析も可能です。解析…終了。ニッシュ=コーレックの言う通り、果実酒のようです』
…不純物はなしか?
『現在私の【鑑定】スキルはLv1ですので、高度な調合の毒薬等の場合は判別できませんが、鑑定の結果は不純物は確認できませんでした』
…飲まない方が良いな。ここの住人は栄養失調をきたす程に食に苦しんでいる。だが、あの村長だけはその症状が見られない…か。あの村長には何かある…それもこの村の問題と直結する何かが…。
「ナギ…」
ノノが不安そうな視線を送ってくる。
「あぁ…飲むのは無しだ」
「それより…この村……」
「あぁ、何かある…のは間違いない。少し探ってみたいけど…」
「ルルア、先にお風呂に入ってしまいなさい」
「「!」」
リリアさんの声が聞こえ、話を中断する。はーい、と返事をし、ルルアが駆けていく。
「……不穏な空気だな、おい。オレこのままルルアをこの村に置いてくってのは出来ねぇぞ?」
ルルアの姿が見えなくなるのを待って、マイルが言う。
「分かってる…とにかく情報を集めたい。でも村の人達に警戒されないよう、慎重に行動するべきだ」
「うん…ルルアたんのこともあるし…」
「俺達だけになれる時間が欲しい…」
「待て!ナギ!」
急にマイルが話を制する。
「……どうした?」
「いや、なんか…」
「お待たせしました」
「「「!!」」」
リリアさんが料理を運んできたので言葉を止めるマイル。リリアさんはテーブルに料理を並べていく。こんがりと焼かれた塊肉、スープにパン、マッシュポテト…。
「ルルアを助けて頂いて本当にありがとうございます…どうぞ……召し上がってください」
「……リリアさんは食べないんですか?」
「っ…」
テーブルに並べられた3人分の料理を見ながら俺は尋ねた。リリアさんの顔が強張る。
「私は…もう、食事は済ませましたので……」
「では…ルルアを待ちますよ。ルルアも夕食はまだ食べていませんので」
「い、いえ…あの子のことはお気になさらず、どうぞ先に食べてください」
…流石に苦しいですよ、リリアさん。
「まともに、食べてないんですよね?」
「っ…」
「だけど、俺達にはこれだけ豪華な食事を提供する…何が目的ですか?」
「目的だなんて…」
リリアさんの体が小さく震えだす。
『卓上の料理の解析が完了しました。強力な睡眠薬を検出』
そうか…ありがとう、アド。
「言い方を変えましょう…睡眠薬入りの料理を俺達に食べさせて、どうするつもりなんですか?」
「っ!!…」
リリアさんの表情が青ざめていく…。
「す、睡眠薬!?マジかよ…」
「……」
マイルは驚きに目を見開き、リリアさんは顔を伏せ、黙っている。なぜ…何が起こっている?この村で…
「…俺達はルルアを信じています」
「!!」
「ルルアが俺達を騙すとは考えられない。ルルアはこの村に帰りたいと、泣いていました…この村での生活を思い出して、楽しそうに話してくれました…元々こんな村では無かったはずだ」
リリアさんの目から一粒の涙が落ちる。…教えて下さい、リリアさん。
「この村に問題が起こったのは、ルルアが人攫いにさらわれた後、ですよね?…この村を訪ねた者にこんな事をしなければならない、何かが起こった。違いますか?」
「…っ……」
最早涙を堪えきれず、ぼろぼろと溢れ出す。リリアさんはその場に崩れ落ちた。そして…
「申し訳ございません!冒険者様!」
リリアさんは床に頭をつけ、続ける。
「こんな事頼めるような立場でないことは分かっていますが、お願いがございます!!」
「お願い…というのは?」
「どうか、ルルアを連れてお逃げ下さい!この村には、もう未来はございません!!」
「「「!!!?」」」
リリアさんは床に頭を擦り付け、懇願する。
「どういう事ですか!?」
「お願いします!時間がありません!ここにいてはルルアも…殺されてしまいます!」
「殺される!?」
「私の夫…あの子の父親も殺されてしまったのです!どうか、ルルアをお救い下さい!!」
これは…想像以上に、ヤバそうだ。この村が抱えている問題は一体…
「どういう…事?…お母さん」
「「!!!」」
そこにはいつの間にかルルアが立っていた。髪も濡れたまま、ルルアは虚な表情をしている。
「お母さん?…お父さんが、死んだって…どういう事?」
「ル、ルルア‥」
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