クルド村

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「…お母さん!お父さん!」



ルルアが駆け出し、クルド村へと入っていく。



「あ、ルルア!」



俺達も慌てて後を追った。



「ルルア?…ルルアなのか!?」


「皆…」



村へと入ったルルアの姿をみて、ぞろぞろと獣人族の村人たちが現れる。猫のような耳と、尻尾の生えた20名近くの男女が、ルルアの姿を見て驚きの表情を見せる。



「ルルア!」

「ルルアじゃないか!!」

「なんということだ…」


「皆、ただいま!!」



ルルアは目に涙を浮かべながら、村人達に笑顔を向ける。



「おい、ルルア…」



俺達もルルアに遅れて村へと踏み入る。



「…冒険者!?」

転移者ストレンジャーだぞ…」

「どうなってるんだ!?」


「あ…えっと…」



村人達が警戒したような目を向けてくる。それにしても…



「この人達は、悪い人じゃないよ!!ルルアを助けてくれたの!!」


「転移者がルルアを?…」

「何者なんだ?」

「…だけど……」



ひそひそと小声で話し、ざわめきだす村人達。…俺達が警戒されるのは分かるが、この空気…


村人達からは、ルルアが戻ったことを喜ぶ…というよりは、不信感や不安…そういう類のものを感じる。村人達はどこかやつれているようにも見え、明らかな疲労が見受けられる…。なんだ?…この村…。


俺は一抹の不安を抱えながら、周囲の様子に気を配る。…簡素な木造の家が並ぶ村…特に目立つものは無い……いや、



「ルルア!?ルルアなの!?」


「!!」



人混みを掻き分け、一人の女性が現れる。ルルアと同じような白い髪と猫の耳…



「お母さん!!」


「ルルア!!」



その女性を見るなり、ルルアが駆け出す。女性の方も手に持っていた網かごを放り出し、ルルアに駆け寄っていく…。



「あぁ!ルルア!!」

「おかあさあぁぁん!!」



二人は抱き合い、ルルアは大声で泣きだす。その様子を見つめている村人達…。



「……ルルア…この…」

「リリア」


「!!…」



ルルアの母親と思しき女性が、ルルアに何かを言おうとした時、しわがれた声が届く。



「……村長」



その声の主は、杖をつきながらルルア達に歩みよる。曲がった背中、豊かな髭と垂れ下がるような眉で、顔の半分が隠れているご老人。この人が、この村の村長か…



「ルルアを助けて下さったのだ。今日はもう日も落ちる…この方々におもてなしをさせて頂きなさい」


「…はい」


「この度は、この村の子供を救っていただいて感謝いたします。大したもてなしは出来ませぬが、今日はこの村で旅の疲れを癒していって下さいませ」



そう言うと深々と頭を下げる村長。



「リリア…この方達を自宅までお連れしなさい。後程、わしからもお礼の品を持って行くでな…」


「わかりました」



もう一度俺達に頭を下げ、立ち去っていく村長。



「お母さん…会いたかった!」


「えぇ…良く帰ってきてくれたわ、ルルア」


「…グスッ……良かったなぁ、ルルア…」


「ルルアたん…」



抱き合う母娘の姿を見て、涙を滲ませるマイルとノノ…。



「………」



だが俺は一抹の不安と、違和感をぬぐい切れずにいた…。俺は地面に転がった網かごと、ひとつの果物を見つめる。



……アド。



『はい、マスター』



一応…



『承知致しました。クルド村全域及び、住人を対象とし、マスターの視界に入ったものを随時解析、情報の共有に努めます』




あぁ、頼む…この村は…






何かおかしい。

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