クルド村
130
「…お母さん!お父さん!」
ルルアが駆け出し、クルド村へと入っていく。
「あ、ルルア!」
俺達も慌てて後を追った。
「ルルア?…ルルアなのか!?」
「皆…」
村へと入ったルルアの姿をみて、ぞろぞろと獣人族の村人たちが現れる。猫のような耳と、尻尾の生えた20名近くの男女が、ルルアの姿を見て驚きの表情を見せる。
「ルルア!」
「ルルアじゃないか!!」
「なんということだ…」
「皆、ただいま!!」
ルルアは目に涙を浮かべながら、村人達に笑顔を向ける。
「おい、ルルア…」
俺達もルルアに遅れて村へと踏み入る。
「…冒険者!?」
「
「どうなってるんだ!?」
「あ…えっと…」
村人達が警戒したような目を向けてくる。それにしても…
「この人達は、悪い人じゃないよ!!ルルアを助けてくれたの!!」
「転移者がルルアを?…」
「何者なんだ?」
「…だけど……」
ひそひそと小声で話し、
村人達からは、ルルアが戻ったことを喜ぶ…というよりは、不信感や不安…そういう類のものを感じる。村人達はどこか
俺は一抹の不安を抱えながら、周囲の様子に気を配る。…簡素な木造の家が並ぶ村…特に目立つものは無い……いや、無さすぎる。
「ルルア!?ルルアなの!?」
「!!」
人混みを掻き分け、一人の女性が現れる。ルルアと同じような白い髪と猫の耳…
「お母さん!!」
「ルルア!!」
その女性を見るなり、ルルアが駆け出す。女性の方も手に持っていた網かごを放り出し、ルルアに駆け寄っていく…。
「あぁ!ルルア!!」
「おかあさあぁぁん!!」
二人は抱き合い、ルルアは大声で泣きだす。その様子を見つめている村人達…。
「……ルルア…この…」
「リリア」
「!!…」
ルルアの母親と思しき女性が、ルルアに何かを言おうとした時、しわがれた声が届く。
「……村長」
その声の主は、杖をつきながらルルア達に歩みよる。曲がった背中、豊かな髭と垂れ下がるような眉で、顔の半分が隠れているご老人。この人が、この村の村長か…
「ルルアを助けて下さったのだ。今日はもう日も落ちる…この方々におもてなしをさせて頂きなさい」
「…はい」
「この度は、この村の子供を救っていただいて感謝いたします。大したもてなしは出来ませぬが、今日はこの村で旅の疲れを癒していって下さいませ」
そう言うと深々と頭を下げる村長。
「リリア…この方達を自宅までお連れしなさい。後程、
「わかりました」
もう一度俺達に頭を下げ、立ち去っていく村長。
「お母さん…会いたかった!」
「えぇ…良く帰ってきてくれたわ、ルルア」
「…グスッ……良かったなぁ、ルルア…」
「ルルアたん…」
抱き合う母娘の姿を見て、涙を滲ませるマイルとノノ…。
「………」
だが俺は一抹の不安と、違和感を
……アド。
『はい、マスター』
一応…警戒しておけ…
『承知致しました。クルド村全域及び、住人を対象とし、マスターの視界に入ったものを随時解析、情報の共有に努めます』
あぁ、頼む…この村は…
何かおかしい。
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